電気の知識

静電気が発生する仕組みやトラブル、生産現場ですぐできる対策などを紹介!

こんな方におすすめ

  • 静電気の仕組みについて知りたい方
  • 工場での静電気によるトラブルについて知りたい方
  • 静電気の対策について知りたい方

静電気と聞くと、嫌なイメージがありませんか?

冬の乾燥した時期に車や会議室のドアやエレベータのボタンを触ったときにバチっと感じた経験、誰もが一度は経験をしたことがあると思います。

そんな嫌なイメージが強い静電気ですが、その特性を利用してコピー機や空気清浄機、塗装などに応用されています。

しかし、工場内での静電気は悪影響をもたらすことが多いです。

目には見えない現象であるため、ミクロの視点では何が起きているのか、気になっている方もいるのではないでしょうか。

今回は静電気とはどんな電気なのか、「発生する仕組み」や「トラブル」、工場などの生産現場でできる「静電気対策」などについて説明していきます。

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静電気とは

静電気が発生する仕組み静電気とは、電荷が動かずに留まっている状態の動かない状態の電気のことを言います。

電気的なバランスが崩れた状態です。

静電気が発生する仕組みは、帯電が関係しています。

一般的な物体はプラスとマイナスの電荷の量が同じであるため、帯電していません。

しかし、物体同士が接触し、摩擦することで、マイナスの電荷を持つ電子が物体間で移動します。

その結果、物体の電子が多いほうはマイナスに帯電し、電子が少ないほうはプラスに帯電します。

上図のように、ガラスのコップを絹製タオルで拭いた場合はガラスの表面の電子が絹製タオルに移動し、ガラスのコップはプラスに帯電し、絹製タオルはマイナスに帯電します。

電荷とは

・粒子や物体が帯びている電気の量
・正電荷(プラス)と負電荷(マイナス)に分類される

静電気がもたらすトラブル

静電気がもたらすトラブルとして、以下の問題があります。

いくつか紹介していきます。

工場内でのトラブル例

・放電時の不快感
・電子部品の故障
・ホコリ等の異物付着
・フィルムの複数枚吸着
・パーツフィーダのつまり

放電時の不快感や電子部品の故障

電子はプラスの電荷に引き寄せられる性質があります。

たとえば、人間がプラスに帯電しているときに、マイナスに帯電している物体に触れると、マイナスの電気が手に流れ込んできます。

その結果、電流が流れて痛いと感じます。

人がドアノブを触った時に痛い思いをするだけで済むだけなら良いですが、場合によっては電子機器の故障やガソリンなどの危険物を取り扱っている箇所では最悪の場合、火災につながります。

車や更衣室のドアやエレベータのボタンを触って痛みを感じたときに、「静電気が発生した!」と言う方もいますが、厳密には電子が指に流れ込んできたというのがより正しい表現だと言えます。

静電誘導による異物付着

電荷間の働き静電気が引き起こすのは痛みというトラブルだけではありません。

帯電した2つの物質の電荷には働く力があり、異なる帯電状態の物質はお互いに引き寄せあい、電荷が大きいほどその引力も強まります。

この現象を静電誘導と言い、その時に働く力をクーロン力や静電力といいます。

そのため静電気が発生することで、コンベアや塗装箇所、製品にゴミが付着したりするというトラブルも起こってしまいがちです。

製品の品質を担保するために、会社によっては静電気対策が求められるケースもあると思います。

シマタケ
小学生の時、髪の毛と下敷きをこすって、髪の毛を立たせて遊んだ経験はありませんか?
下敷きがマイナスに帯電、髪の毛がプラスに帯電し、引き合ってる静電誘導の1つです。

季節によって発生しやすさが異なる理由

秋から冬にかけて空気が乾燥するにつれて静電気は発生しやすくなります。

なぜ季節によって静電気の発生状況が変わるのでしょうか。

実は空気中の水分量が関係しています。

湿度が高い夏であれば、空気中の水分によって放電され、物体や人体が帯電しづらくなります。

湿度が43%以下のときに発生しやすくなるので、目安として知っておくとよいでしょう。

静電気の対策

帯電する量の主な要素として「接触面積」「摩擦力」「湿度」があり、この要素を考慮することで対策します。

金属に触る前に壁や地面を触る

これが手間が少なくて1番簡単な対策です。

帯電した状態で更衣室や会議室に入退室するときにすぐに金属製のドアノブを触ると、一気に電気が通り、バチっとなります。

ドアノブを触る前に部屋の壁を触ったり、地面のコンクリートやアスファルトを触ったりして人体に帯電している静電気を逃がしましょう。

木材や壁、コンクリート等の素材は静電気を「ゆっくり逃がす性質」があります。

素材の組み合わせを変える

帯電列について静電気が物体同士の摩擦によって発生するのであれば、接触の回数や接触する面積を減らせばよいとわかります。

また、物体によって帯電のしやすさが異なるため、反対の電荷を蓄積しやすい物質同士を近づけない組み合わせを考えることも大切です。

帯電のしやすさは物体ごとに異なっており、人毛やガラス、ウールなどはプラスに帯電しやすく、塩化ビニールやポリエチレン、アクリルなどはマイナスに帯電しやすい傾向です。

特に冬場はセーターやヒートテックなどの化学(合成)繊維で作られている帯電しやすい服を着たり、重ね着をしたりすることで静電気の発生量が増えてしまいます。

重ね着をする時は帯電しにくい綿素材の服を着るのがおススメです。

シマタケ
私は化学繊維の素材のインナーを着ると、背中の肌が荒れてしまったので綿100%のインナーを着ています。
静電気対策と肌荒れ対策です。

アース接地で静電気を逃がす

静電気が電気的バランスの崩れによって帯電状態になるのであれば、物体に接地をして電荷をアースに逃がせばよいととわかります。

また、金属製の板などの上に物体を置いたり、帯電防止用の手につけるアースバンドや静電気除去シートなどを利用したりするもの有効な対策です。

イオナイザーで静電気を除去する

イオナイザーは静電気をイオンで中和し、除電を行なう装置です。

今回は詳しく説明しませんが、キーエンスやIDEC、パナソニックから発売されており、色々な発生方式があります。

注意点として、イオナイザーを使用するときは環境です。

例えば、金属の物体が近くにあると、金属の物体がイオンを引き付けることになり、除電できないことがあります。

シマタケ
設備にイオナイザーを設置していますが、設置している中には取付箇所が悪いのか、静電気除去できていない箇所もあります。
個人的な感覚になりますが、接地することが可能であればアースに逃がすのが1番有効かなと感じています。

湿度を上げる

冬場は乾燥して湿度が低くなり、静電気が発生しやすくなるので、物体を取り巻く空間を加湿して空気中の水分量を増やすのが有効です。

加湿することが難しい場合、先程ご説明した「素材の選択」に目を向けるのが有効です。

たとえば、天然繊維は吸湿性が高いので、自然と放電されやすくなり、化学繊維は吸湿性が低いため、静電気が発生しやすくなります。

ゴム製の靴を履かない

ゴム製の靴は絶縁性が高く、電気を通しにくい性質であるため、人体から静電気が逃げにくくなり、帯電しやすくなります。

感電対策の観点からゴム製の靴を履かなければいけない場合は仕方がありませんが、靴の指定がない場合は靴底がゴムになっていない靴を履くのが有効です。

まとめ:静電気のトラブルを回避しよう!

最後にもう一度整理ます。

まとめ

・静電気は電荷が動かずに留まっている状態の動かない状態の電気
・素材によって+に帯電しやすい、-に帯電しやすい物がある
・異なる帯電状態の物質はお互いに引き寄せる。(静電誘導)
・対策はアース接地、素材の組み合わせ、除電、加湿など

今回紹介したトラブル以外にも静電気によるトラブルはさまざまあります。

仕事でのトラブルを少しでも回避できるように、あらためて静電気の仕組みや対策をおさらいしておくようにしましょう。

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シマタケ

共働きの子育て会社員。工場で15年間働く電気エンジニア。多数の国家資格を取得。施設や工場で働く方々が勉強できる、様々な悩みを解決できるサイトを目指しています。雑記記事も時々書きます。心理学を勉強中でメンタルケア心理士、行動心理士取得。

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