こんな方におすすめ
- 漏れ電流の測定方法を知りたい方
- 漏れ電流について知りたい方
- リーククランプメーターについて知りたい方
電流には漏れ電流と負荷電流がありますが、今回は漏れ電流の測定方法を下画像の横河電機CL340を使用して説明していきます。
漏れ電流と負荷電流では使用するクランプメーターが異なりますので間違わないように気を付ける必要があります。
そんな漏れ電流は機器の故障トラブルを発見する指標となりえますので、ぜひ使い方を覚えましょう。
ここで漏れ電流、負荷電流って何?と思った方は下の記事をご覧ください。
この記事の動画版として、YouTubeにて公開しています。
目次
漏れ電流とは
漏れ電流は漏えい電流、リーク電流とも呼ばれ、本来流れる電路以外に漏れてしまった電流のことです。
絶縁状態を示す指標となります。
漏れ電流はノイズを発生させたり、周囲の人間を感電させたりするケースがあるので注意が必要な電流です。
電気設備の損傷や経年劣化によって漏れ電流は増加し、漏れ電流の基準値は1mA以下と言われています。
なぜ1mA以下なのか?
なぜ漏れ電流の基準が1mA以下であるかと言いますと、電気設備技術基準・解釈の第3節第14条では、以下のように記載されています。
二 絶縁抵抗測定が困難な場合において、当該電路の使用電圧が加わった状態における漏えい電流が、1mA以下であること。
出典:電気設備技術基準・解釈 第3節 第14条「低圧電路の絶縁性能」
これは1mA以下でしたら、絶縁性能が保たれていると解釈できます。
もう1つ、下の表をご覧ください。
絶縁抵抗の基準値になります。
電路の使用電圧の区分 | 絶縁抵抗値 | |
対地電圧(接地式電路においては電線と大地との間の電圧、非接地式電路においては電線間の電圧をいう)が150V以下の場合 | 0.1MΩ以上 | |
その他の場合 | 0.2MΩ以上 | |
300Vを超えるもの | 0.4MΩ以上 |
出典:電気設備技術基準 第3章 第1節 58条より
この表に記載されている電圧と絶縁抵抗から電流値を計算すると、どの場合でも1mAになります。
今回の記事で使用した計器
使用したクランプメーターは横河電機のCL340です。
特徴として、mAからAまで広範囲の電流測定ができるクランプメーターです。
測定値を保持したり、ピークを測定したり、フィルタ機能があります。
その中でもフィルター機能は便利です。
最近の設備にはインバーターやパワーサプライ(スイッチング電源)が多く使用されており、高調波が入り込んできて一緒に測定してしまうことがあります。
フィルター機能を使用することで高調波をカットし、50Hz/60Hzの基本波だけ測定することができます。
測定時の注意点
注意点として3つあります。
注意点
1.漏れ電流が測定できるクランプメーターで測定する。
2.活線中で測定する。
3.測定レンジを超えないように測定する。
1.漏れ電流が測定できるクランプメーターで測定する。
漏れ電流はmAでとても小さい値ですので、小さな電流を測定できる漏れ電流専用のクランプメーターで測定します。
負荷電流測定用のクランプメーターでは測定できません。
2.活線中で測定する。
漏れ電流は活線中(電気が流れている状態)で測定します。
ブレーカーをOFFにすると、負荷への電流が流れなくなりますが、漏れ電流も流れなくなります。
3.測定レンジを超えないように測定する。
測定電流がレンジの測定範囲を超えないように注意してください。
オートレンジの時は気にしなくていいのですが、レンジが複数ある場合で、電流値が不明のときには、大きいレンジから確認し最適なレンジで測定します。
理由として、2つあります。
1つは測定対象の電流が大きすぎる場合、クランプメーターが測定できる範囲を超えてしまい、正確な測定ができなくなってしまいます。
2つめは、電流が大きすぎる場合、クランプメーターのセンサーに負荷がかかり、測定器や回路に損傷を与える可能性があります。
漏れ電流の測定方法
電源線をまとめてセンサー部分ではさんで測定する方法と、アース線1本をはさんで測定する方法があります。
電線線をまとめて挟む方法
単相2線式の場合は電源線を2本まとめてクランプメーターで挟みます。
三相3線式の場合は3本まとめてはさみます。
負荷が大きいと配線のサイズも大きくなりますので、クランプできる測定可能な導体径を確認しておきましょう。
無理にクランプ(はさむ)すると破損します。
なぜはさむだけで測定できるのか?
単相2戦式の図で簡単に説明します。
まず電流の流れについてですが、電気機器(負荷)へ流れた電流は戻ってきます。
このときは行きと帰りの電流は同じ大きさで方向が反対になっています。
漏れ電流が0の場合、お互いに打ち消しあい0Aになります。
今回は分かりやすいように0Aと言いましたが、実際には完全に0A、漏れ電流をなくすことはできません。
絶縁材料で覆っても、電気機器や回路全体、配線などからどうしても微小な漏れ電流が発生します。
もし、漏電が発生している場合(漏れ電流が流れている場合)は行きと帰りの電流に差が生じますので、その差を計測しています。
クランプメーターは電流から発生する磁界を測定しており、漏れ電流がないときは意行きと帰り 逆向きの磁界が生じ、2つの磁界が打ち消しあいます。
漏れ電流が発生すると、磁界に差が生じ、その差が漏れ電流になります。
アース線を挟む方法
もう1つの測定方法として、アース線を1本だけはさみます。
モーターですと近くに電源線もありますので、すべての配線をはさまないように注意しましょう。
実演:漏れ電流の測定
では、最後に漏れ電流を測定してみます。
自宅で撮影していますので洗濯機の漏れ電流を測定してみたいと思います。
リーククランプメーターとクランプメーターの2つで試します。
使用する計器
リーククランプメーター:横河CL340
クランプメーター:エー・アンド・デイ AD-5587
リーククランプメーターで測定
まずは横河電機リーククランプメーターでアース線に流れる漏れ電流を測定します。
レンジスイッチを40mAにし、開閉レバーを押して、コア部分を開け、アース線を挟みます。
アース線を挟む(クランプする)と、表示部に測定結果が表示されます。
0.25mAぐらいです。
つぎに電源線を挟んでみます。
こちらは0.74、0.75mAです。
負荷電流用のクランプメーターで測定
つぎにエー・アンド・デイのクランプメーターAD-5587で測定します。
アース線を挟みます。
測定値は0Aです。
電源線をまとめて挟みます。
こちらも0Aで測定できません。
まとめ:漏れ電流の測定について
今回はクランプメーターの測定方法について紹介しました。
最後にまとめて終わりにします。
ポイント
・漏れ電流を測定するときはリーククランプメーターを使用する。
・測定方法は2つ 配線をまとめて挟むかアース線1本を挟んで測定する。
漏れ電流の測定は電気設備の管理で必要です。
業務の中で使用する機会はありますので、ぜひ覚えてください!
漏れ電流について、もう少し詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
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参考文献・サイト