今回の記事ではフェルール端子の圧着方法について、ドイツの有名なメーカーであるフェニックス・コンタクトのフェルール端子と圧着工具を用いて圧着方法を紹介します。
フェルール端子とは、スプリング式の端子台に電線を固定するための棒状の端子です。
海外、特にヨーロッパで広く使用されており、ネジ式の端子台に比べて省スペース化、配線作業工数の削減というメリットがあり、少しずつ日本でも使用される機会が多くなってきています。
下の画像は過去、YouTubeのコミュニティにて皆さんにアンケートにご協力して頂いた結果になります。
日本ではまだまだネジ式が多いですが、最近はフェルール端子に対応した製品が発売されてきているので、フェルール端子の配線作業の機会は増えてくる可能性は十分にあります。
目次
フェルール端子とは
フェルール端子とは、上の画像ような棒状の端子のことです。
「絶縁スリーブ」と呼ばれる部分と「導電部」と呼ばれる部分があります。
注意点として、どのフェルール端子を使用しても良いわけではありません。
電線(導体)のサイズに応じて、フェルール端子を選ぶ必要があります。
例えば、上のフェルール端子の型番はAI0.75-8GYになります。
電線(導体)の断面積が0.75㎡、導電部の長さが8mm、絶縁スリーブの色がグレーを表しています。
フェルール端子の種類
今回は7種類のフェルール端子を用意しました。
左からAI 0,34-8 TQ(ターコイズ)、AI0.5-10WH(白)、AI0.75-8GY(グレー)とAI0.75-10GY(グレー)、AI1.5-8BK(黒)AI1.5-10BK(黒)、AI2.5-10BU(青)です。
例えば、AI0.75-8GYとAI0.75-10GYは両方とも絶縁スリーブの色がグレーでそっくりですが、よく見ると導電部の長さが違います。
上の端子がAI0.75-10GYで導電部10mm、下の端子がAI0.75-8GYで8mmです。
どちらの長さのフェルール端子を使用するか、挿入する端子台などの仕様によって決めます。
例えば、0.75㎡の電線でしたらAI0.75-8GYまたはAI0.75-10GYを使用します。
1.25㎡の電線でしたAI1.5-8BKまたはAI1.5-10BKを使用します。
2本線用フェルール端子(TWIN)
電線を2本挿入できるツインタイプのフェルール端子もあります。
用途としては電源など配線を渡らせたい時に使用します。
使用する圧着工具について
今回使用する工具はフェニックス・コンタクトのCRIMPFOX CENTRUS 6Sを使用します。
電線の適用範囲0.14-6[㎟] (AWG26~10)です。
電線サイズの表記SQとAWGについて
参考までに電線(導体)サイズの表記方法として、2つあります。
JIS規格にて制定されている平方ミリメートル、SQ(スケア、スクエア、スケ)と呼ばれる電線サイズの規格とアメリカで用いられる電線サイズの規格でアメリカのUL規格にて制定されているAWG(American Wire Gauge)があります。
㎟(sq)は数字が大きいほど、電線の導体部分が太くなり、AWGは数字が大きいほど、電線の導体部分が細くなります。
この2つの規格は同等の断面積の電線があり、平方ミリメートルとAWGの関係として、このような表みたいに変換できます。
換算表や対応表として色々なサイトに書かれていますので、「sq awg 換算」などと検索してみてください。
工具の特徴について
私がよく使用する画像の一番左側のY端子や丸端子用圧着工具や会社で使用しているフェニックス・コンタクトの圧着工具は、配線サイズによってダイと呼ばれる溝を選定しないといけません。
しかし、今回の工具はダイ(溝)が1つしかありませんので、選定ミスによる圧着ミスはありません。
あとは工具先端、見てください。
プラスチック製ガードが付いており、工具を落とした際に保護されます。
注意
・今回はフェルール端子専用の工具になりますので、他の端子を圧着するのはダメです。
・異なるメーカーのフェルール端子の圧着工具では、使い方が異なるかもしれません。
フェルール端子の圧着方法
それではフェルール端子を圧着していきたいと思います。
今回は、機器内配線用のビニル電線KIV0.75sq青色にフエニックス・コンタクト製のフェルール端子AI 0.75-8 GYを圧着します。
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1電線を剥く。
電線の被覆をワイヤストリッパーで剥きます。
今回はベッセルのワイヤストリッパー3000Cを使用します。
電線の剥く長さが重要です。
今回圧着するフェルール端子AI 0.75-8GYという型番ですが、推奨の剥く長さは11mmになっています。
推奨の長さはカタログなどに書かれている仕様をご覧ください。
もし、電線の剥き方が分からない方は↓下の記事の最初の部分をご覧ください。
ワイヤストリッパーの使い方が書かれています。
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裸端子用圧着工具(ペンチ)の正しい使い方とコツを詳しく説明
続きを見る
動画でも使い方を説明しています。
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2電線をフェルール端子に挿入
剥いた電線をフェルール端子の奥までしっかりと差し込みます。
ポイントとして、電線を捻じる(ねじる)、よじるとヒゲになりにくく、端子に挿入し易いです。
ひげ線、ヒゲとは
端子から電線の一部が端子から、ピロっとはみ出ている状態を「ヒゲ」といいます。
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3フェルール端子を圧着
フェルール端子を“ダイ”に挿入します。
“ダイ”に挿入しましたら、ハンドルを強く握ります。
ハンドルが解除するまで握りきってください。
強く握ったあとは、勝手にハンドルが開きます。
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4圧着状態を確認
目視で確認と軽く電線を引張り、電線がフェルール端子から抜けない事を確認します。
また、圧着状態に問題ないか確認します。
具体的な確認は次の項目で説明します。
ダメな圧着例 5つ
圧着状態の確認として、上画像の5つになっていないことを確認します。
1.電線がフェルール端子から飛び出ている
フェルール端子から電線が飛び出ている場合は0~0.5㎜を目安に切断します。
2.電線の挿入不足
フェルール端子に挿入する電線が不足すると、圧着される部分が少ないため、電線がフェルール端子から抜けてしまう可能性があります。
3.フェルール端子が圧着しきれていない
フェルール端子がしっかりと圧着しきれていない場合、電線がフェルール端子から抜けてしまう可能性があります。
4.ヒゲがでている。
見栄えが悪いだけではなく、最悪の場合は隣の端子と接触し、短絡してしまう可能性があります。
もし、ひげが出た場合は面倒だと感じてもやり直しましょう。
5.フェルール端子の先端や側面が損傷/損傷している。
可能性としては低いですが、損傷や変形している場合は、接触不良になる可能性がありますので、再度圧着しなおします。
参考:ひげ線の処理について 回答1000名以上
ちなみにヒゲ線の処理について、圧着端子からヒゲ線がでていた場合、どのような処理をするかアンケートを致しました。
選択肢の下記画像のように4つです。
アンケート結果は↓このようになりました。
YouTubeの動画を作成する2月9日の時点で1001名の方から回答がありました。
いかがでしょうか。
アンケートでは、電線サイズが小さく、流れる電流値も少ない場合は「ひげ」だけ切断するという意見や、そもそも失敗しないという意見を頂きました。
まとめ:フェルール端子の圧着方法
今回はフェニックス・コンタクトのフェルール端子用圧着工具「CRIMPFOX CENTRUS 6S」の使い方について紹介いたしました。
日本でも使用されることが多くなってきているので、少しずつフェルール端子を使用する機会が増えていくと思います。
今回使用した圧着工具はミスミ、モノタロウ、アマゾン、楽天などで購入することができます。
興味のある方は確認してみてください。
最後に注意点として、フェルール端子は、フェニックス・コンタクト以外にも販売しているメーカーがあります。
また、フェルール端子以外にも圧着端子は色々ありますので、それぞれに対応した圧着工具、圧着方法でお願いします。