こんな方におすすめ
- 絶縁抵抗計について知りたい
- 絶縁抵抗計の用途について知りたい
- 絶縁抵抗計の測定する時の印加電圧、判定基準を知りたい
今回は「絶縁抵抗計」の使い方について、説明していきたいと思います。
いきなり実演として、絶縁抵抗計の測定方法だけの記事にしますと、絶縁抵抗に関する説明が不足したり、記事が文字数が多くなり、見にくくなります。
ですので、実演に関する記事と分けて、今回の記事は座学編として、測定する前に知っておくべき内容をお伝えしていきます。
絶縁抵抗について知らない方、抵抗と何が違うのか、確認しておきたいという方はこちらの記事をご覧ください。 続きを見る
抵抗や絶縁抵抗、接地抵抗の違いを解説!意味を理解する必要性は?
実際の計器を使用した測定方法は別の記事にて、紹介いたします。
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目次
絶縁抵抗計とは?
絶縁抵抗計はその名の通り、絶縁抵抗を測定する計器であり、
絶縁物に不良が発生していないか絶縁物の抵抗を確認する時に使用します。
絶縁抵抗の単位はMΩ メガオームと呼びます。
電気機器や配線は感電しないように絶縁物でおおわれており、電流が漏れないようになっていますが、絶縁抵抗が低くなると、電流が漏れ出し、最悪の場合は感電や火災の要因となります。
何MΩになったらダメなのか、絶縁抵抗値の判定基準の詳細については後程、紹介しますが、絶縁が良好な場合は絶縁抵抗の値が高く、絶縁が悪い場合は0MΩ近くの値となります。
絶縁抵抗計の種類
計器の種類として、測定された絶縁抵抗値を針で示すアナログ式や、数値で表示するデジタル式があります。
また、低圧用と高圧用の絶縁抵抗計があります。
参考までに電圧の区分は電気設備技術基準第1章第1節第2条では「低圧」「高圧」「特別高圧」の3種類で区分けされています。
区分 | 交流 | 直流 | 用途 |
低圧 | 600V以下 | 750V以下 | 一般家庭 |
高圧 | 600V超え7,000V以下 | 750V超え7,000V以下 | 小・中規模な工場や施設など |
特別高圧 | 7,000V超え | 7,000V超え | 大規模な工場・施設など |
電気設備技術基準第1章第1節第2条より
今回の記事では「低圧用」の絶縁抵抗計について紹介していきます。
どんな時に使用するのか?
絶縁抵抗計を使用する時の具体的な例として、3つ紹介します。
設備や施設の定期点検時
モーターやポンプの絶縁抵抗を定期点検時に問題ないか確認します。
漏電遮断器が作動した時の原因調査時
漏電遮断器が動作したときに、どこの回路で絶縁不良が発生しているか確認する時に使用します。
ブレーカー、電気機器、設備の交換(更新)または増設時
交換や更新が終了し、動作確認する時の電源の投入前に接続に問題ないか確認します。
テスターで絶縁抵抗は測定できない?
絶縁抵抗って"抵抗"とつくので、テスターの抵抗測定機能で測定できるのではないかと思う方はいませんか?
残念ながら絶縁抵抗計でなければ測定することができません。
理由として、絶縁物は印加する電圧によって抵抗が変化したり、流れる電流が小さかったりするので、テスター内蔵の3Vや9V程度の電圧を印加した時の抵抗値と、100Vを印加して測定した時の抵抗値は大きく異なります。
ですので、実際に使用している電圧で測定して、どれだけの絶縁抵抗か測定しないと意味がありません。
絶縁抵抗計も電池で駆動している?
絶縁抵抗計はテスターと異なり、内部にDC/DCコンバータが内蔵されており、直流電圧を昇圧することができます。
測定するときの印加電圧
絶縁抵抗計を測定する時の電圧はその回路の電圧以上の電圧を印加します。
これは内線規程や日本産業規格(JIS C1302)電気設備技術基準省令3章第1節第58条に記載されています。
まず、測定電圧に関しては民間規定である「内線規程」では下記のように記載されています。
低圧電路の絶縁抵抗を測定する絶縁抵抗計は、電路の使用電圧相当の定格測定電圧以上のものを使用することが望ましい。
内線規程」1345節 電路の絶縁
また、日本産業規格(JIS C1302)ではこちらの表のように使用例が書かれています。
定格測定電圧 | 使用例 |
25V/50V | 電話回線用機器、電話回線電路の絶縁測定 |
100V/125V | 100V系の低電圧配電路および機器の維持・管理 |
制御機器の絶縁測定 | |
250V | 200V系の低電圧配電路および機器の維持・管理 |
500V | 600V以下の低電圧配電路および機器の維持・管理 |
600V以下の低電圧配電路の竣工時の検査 | |
1000V | 600Vを越える回路および機器の絶縁測定 |
常時使用電圧の高い高電圧設備(例えば、高圧ケーブル、高電圧機器、 高電圧を用いる通信機器および電路)の絶縁測定、太陽電池アレイ |
出典:JIS C 1302-2018絶縁抵抗計 解説より
印加する電圧について、私は基本的に100V回路の場合125V、200V回路の場合は250Vを印加、場合によっては新品時500V印加するときもあります。
これは接続されている負荷や会社によって異なると思います。
例えば、電子基板などの弱電回路が多い機器などがつながっている100V回路を測定するときは故障する恐れがありますので、電圧を25Vや50Vに設定して絶縁抵抗を測定している業者の方もいらっしゃいました。
また、過去に測定して壊れたことがあるから一部絶縁抵抗測定が禁止の回路がある会社もあるとお聞きしました。
絶縁抵抗の判定基準値
絶縁抵抗が何MΩ以上あればいいのか、判定基準に関しては電気設備技術基準 省令3章第1節第58条「低圧の電路の絶縁性能」や内線規程に示されています。
電路の使用電圧の区分 | 絶縁抵抗値 | |
対地電圧(接地式電路においては電線と大地との間の電圧、非接地式電路においては電線間の電圧をいう)が150V以下の場合 | 0.1MΩ以上 | |
その他の場合 | 0.2MΩ以上 | |
300Vを超えるもの | 0.4MΩ以上 |
出典:電気設備技術基準 第3章 第1節 58条より
上記の表のとおり、対地電圧150V以下で0.1MΩ以上、300V以下で0.2MΩ以上、低圧で300Vを超えるものは0.4MΩ以上の絶縁抵抗値が必要とされています。
また、絶縁抵抗値が判定基準にギリギリの場合について、
例えば、200Vの場合、対地電圧150Vを超え使用電圧300V以下のものになりますので、0.2MΩ以上であれば基準を満たしていますが、0,2MΩでは絶縁状態は良好とはいません。
絶縁抵抗の判定基準値の根拠
絶縁抵抗の判定基準の根拠についてですが、低圧電路の漏れ電流を1 mA以下にするためです。
なぜ1mA以下であるかと言いますと、電気設備技術基準・解釈の第3節第14条では、以下のように記載されています。
二 絶縁抵抗測定が困難な場合において、当該電路の使用電圧が加わった状態における漏えい電流が、1mA以下であること。
出典:電気設備技術基準・解釈 第3節 第14条「低圧電路の絶縁性能」第2項
これは1mA以下でしたら、絶縁性能が保たれていると解釈できます。
例として、100V回路の場合は絶縁抵抗の判定基準として150V以下の0.1MΩ以上になりますが、オームの法則にあてはめて、1mAのときの絶縁抵抗値を計算すると、
100V÷1mA(0.001A)で0.1MΩとなります。
このように各電圧に対する絶縁抵抗の値が定められています。
絶縁抵抗の種類について
絶縁抵抗を測定する箇所は大きく分けて、「線間絶縁抵抗」と「対地間絶縁抵抗」の2種類があります。
線間絶縁抵抗
線間絶縁抵抗は各相間の絶縁抵抗を測定します。
線間絶縁抵抗が劣化すると、短絡状態になります。
具体的に線間絶縁抵抗の測定箇所は接地を除く全ての相の組み合わせを測定します
単相2線式
単相2線式はL-N間 の1箇所
単相3線式
単相3線式はL1-N間、L2-N間、L1-L2間 の3か所を測定します。
L1-N間
L2-N間
L1-L2間
三相3線式
三相3線式はR-S間、S-T間、T-R間 の3か所を測定します。
R-S間
S-T間
T-R間
絶縁抵抗計はLINE端子に赤色のプローブ、EARTH端子に黒色のプローブを接続して使用します。
測定時、赤色のプローブと黒色プローブがありますが、入れ替えても問題ありません。
各相を測定するので、EARTH端子側は、ワニ口クリップではなく、通常のプローブを使用と測定しやすいです。
対地間絶縁抵抗
対地間絶縁抵抗は各相と大地間の絶縁抵抗を測定します。
対地間絶縁抵抗が劣化しますと、大地に流れる漏れ電流が大きくなり、地絡状態になります。
具体的に対地間絶縁抵抗の測定箇所は接地と各相の全ての組み合わせを測定します。
単相2線式
単相2線式はL-E間、N-E間 の2か所を測定します。
L-E間
N-E間
単相3線式
単相3線式はL1-E間、L2-E間、N-E間 の3か所を測定します。
L1-E間
L2-E間
N-E間
三相3線式
三相3線式はR-E間、S-E間、T-E間 の3か所を測定します。
R-E間
S-E間
T-E間
線間絶縁抵抗測定ではどちらの色のプローブを接続しても問題ありませんでしたが、対地間絶縁抵抗測定ではEARTH端子を接地側、LINE端子を相側に接続します。
ポイントとして、EARTH端子は接地に接続したまま、各相を測定するので、EARTH端子側は、ワニ口クリップを使用すると便利です。
まとめ:絶縁抵抗計とは
今回は絶縁抵抗計とは何か?どんな時に使用するのか?印加電圧、判定基準など、絶縁抵抗を測定するときに必要な情報をお伝えしてきました。
絶縁抵抗測定は電気設備の管理では必須となりますので、印加する電圧や判定基準、線間・対地間の違いなど、理解することが重要です。
以下の記事では実演として、実際に分電盤の分岐回路、制御盤のモーター回路の絶縁抵抗を測定した記事になりますので、絶縁抵抗計の使用方法を知りたい方、覚えたい方、ぜひご覧ください。
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線間・対地間絶縁抵抗の測定方法を分電盤と制御盤の事例にて説明
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参考文献・サイト
電気設備技術基準
内線規程