こんな方におすすめ
- 電圧降下について知りたい方
- 電圧降下の対策方法を知りたい方
- 電圧降下の許容範囲を知りたい方
電気に関わる仕事をしているのであれば、"電圧降下"という言葉を聞いたことがあるかもしれません
電圧降下は配線を選定をするときに注意する必要があります。
電圧が下がるということはわかりますが、理由についてよくわからない方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は「電圧降下の意味や原因」「対策方法」「許容範囲」について説明していきます。
電気に関する知識を深めるための参考にしてみてください。
目次
電圧降下とは?
電圧降下を理解するためには、電圧の意味から理解する必要があります。
まずは電圧についておさらいしていきましょう。
電圧とは
電圧は、電気を流す能力の大きさをあらわし、電圧が高いと多くの電流が流れます。
電圧を理解するときには釘の刺さったボードにたくさんのビー玉を転がすシーンを想像するとわかりやすいです。
板の傾斜を高めていくほど転がるビー玉の勢いが増えます。
電圧はまさに板の傾斜と同じようなものであり、値が増えるほど電線に流れる電流の勢いが増加します。
電流が流れると電圧が下がる
同じ電線であれば、どの部分も同じ電圧だと思ってしまうかもしれませんが、厳密には違います。
電圧を加えた電線やケーブルは、末端に近づくにつれて電圧が低くなることが知られており、この現象を”電圧降下”と呼びます。
電圧が下がる理由は電線やケーブルの抵抗です。
抵抗に電流が流れると発熱してしまい、エネルギーが失われてしまいます。
したがって、もとから想定した電圧(電気を流す能力)が余計な部分に使われてしまいます。
電圧降下が起きるとどうなる?
電圧降下が生じると本来必要な電圧が不足してしまい、定格よりも低い電圧で負荷に電源が供給されていると、不具合が発生することがあります。
たとえば、パソコンの電子機器が電源を維持できなくなって突然再起動を起こしたり、蛍光灯であれば寿命や光束が低下したりするかもしれません。
そのため、電圧降下が大きくなるようであれば、電圧降下を減らすための対策が必要になります。
電圧降下を防ぐための対策とは?
電圧降下を防ぐためには以下の2つの対策があります。
対策
・電線サイズの適正化
・劣化した電線を使用し続けない
対策方法1.電線のサイズを適正化する
電圧降下と深く関わる指標が抵抗です。
抵抗値の計算式は下記の通りあらわされます。
R[Ω]:抵抗値 ρ[Ω・m]:抵抗率 l[m]:導体の長さ S[m²]:導体の断面積
抵抗の値は電線の長さが長く、電線の太さが細いほど大きくなります。
当然、抵抗の値が増加すれば、電流の流れが阻害されることにより浪費するエネルギーも増えてしまい、電圧降下が発生しやすくなります。
したがって、電線の長さを短くして、電線の太さを太くするなど、電線のサイズを適正化することで電圧降下を防ぐことが可能です。
対策方法2.劣化した電線を使い続けない
電線を長期間使用している場合は傷がついたり、端子台との接続が緩んだりすることで、部分的に抵抗が高くなります。
異常発熱が発生すると、電圧降下の増加につながる恐れがあります。
したがって、劣化した電線を使い続けないことも大切と言えます。
電圧降下の許容範囲
どんな電圧降下の対策をしても電圧降下は発生します。
そこで、内線規程(1301-1)では"電圧降下の許容される範囲"が決められています。
1.低圧配線中の電圧降下は、幹線及び分岐回路において、それぞれ標準電圧の2%以下とすること。
ただし、電気使用場所内の変圧器により供給される場合の幹線の電圧降下は、3%以下とすることができる。内線規程1310-1 電圧降下
文書だけではイメージしにくいので、例として1つ紹介します。
上図の例は工場にて受電設備の変圧器より分電盤を経由して負荷へ電気が供給される場合になります。
まず、変圧器から分電盤までの幹線は標準電圧の3%以下にする必要があります。
分電盤から負荷までの分岐回路は2%以下にする必要があります。
許容できる合計は5%以下となり、200Vの場合は10Vまで許容できることになります。
また、大きな工場などで供給変圧器の二次側から負荷までの電線こう長が、60nを超える場合は以下の許容範囲になります。
表は「内線規程1310-1表 こう長が60mを超える場合の電圧降下」から抜粋した表になります。
供給変圧器の二次側端子又は引込取付点から最遠端の負荷に至るまでの電線こう長(m) | 電圧降下 |
電気使用場所内に設けた変圧器から供給する場合 | |
120m以下 | 5以下 |
200m以下 | 6以下 |
200m超過 | 7以下 |
今回の記事では電圧降下の計算式については割愛します。
許容範囲が厳しくなりすぎると電線にかかるコストがアップし、経済的な問題が発生しますからでしょうか?
まとめ:電圧降下
今回は電圧降下について説明いたしました。
電圧降下は電気の仕事をするうえでは必要な知識です。
ケーブルを選定する設計者は電圧降下を考慮して選定する必要がありますが、現場でも必要です。
たとえば、コンセントの電圧が通常よりも低ければ、電圧降下が発生している可能性があり、コンセントに至るまでの経路に施工不良などの要因があることを想定できます。
また、私の現場でも点検として動力盤や制御盤の電圧値を記録していますが、電圧に異常が起きていないか確認し、異常を察知するための予防策といってもよいのではないかと思います。
このように電圧降下を理解することで、電気まわりにおけるトラブルを察知しやすくなります。