屋内配線図では簡素化するために単線図で表しますので「配線が何本必要か」、「どのように接続するか」分かりません。
そんな単線図は実際に電気工事をするときに複線図に書き直す必要があります。
経験が豊富な電気工事屋でしたら、頭の中で考えることができますが、初心者はそんな簡単にはできません。
失敗しないためにも、複線図を書くことをオススメします。
また、電気工事の試験を受ける時に単線図を複線図に書き直す力を身に着けておくことも必須です。
今回の記事では3ステップのルールで「単線図から複線図にするための手順」を4つの回路を例に紹介していきます。
記事を読んでぜひ複線図の書き方を覚えてください。
こんな方におすすめ
- 単線図から複線図の手順が分からない方
- 複線図の書き方を忘れた方
複線図を書くためには単線図の見方や図記号を覚える必要があります。まだ覚えていないという方は最初にコチラをご覧ください。
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電気屋が図と写真で説明!住宅(家)の電気屋内配線図面の見方
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目次
複線図にするための手順
単線図から複線図に書き直す時は3ステップの手順で行います。
見た目は難しいと思われる複線図ですが、3ステップを覚えると書けるようになります。
- 電灯やスイッチを配置する
- 電源の接地側の線とスイッチ以外の器具を接続する
- 電源の非接地側の線をスイッチを通して器具と接続する。
スイッチと関係のない器具はそのまま接続する。
では、まずはシンプルな回路で説明していきます。
複線図の詳細な書き方
上図を3ステップのルールで複線図にしていきます。
今回の回路
・スイッチをオンにすると電灯(照明)が点灯し、オフにすると消灯します。
・コンセントはスイッチに関係なく、つねに電気がながれています。
step
1電灯やスイッチの配置
まず最初は単線図を見て、電灯、スイッチ、コンセントを配置します。
スイッチ(点滅器)の図記号は黒丸ではなく、図のように書きます。
電線同士を接続する部分のジョイントボックスは「点線の丸」で書きます。
電源は非接地側をL、接地側をNとします。
LとNで問題ありません。黒丸と白丸で表現する方もいます。
慣れてくると何も書かない方が多いです。
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2電源の接地側の線とスイッチ以外の器具を接続
電源の接地側(N)の線とスイッチ以外の電灯とコンセントを接続します。
それぞれの器具から電源の接地側と線でつなぐと、線が重なります。
線が重なる箇所は電線同士を接続する意味を表し、黒い丸の接続点を書きます。
書き忘れ防止のため、すぐに書くことをオススメします。
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3非接地側の線をスイッチを通して器具と接続、それ以外は直接つなぐ。
今回の回路ではスイッチで電灯をオンオフするので、電源の非接地側の線をスイッチを通して、電灯と接続します。
スイッチに関係のないコンセントはそのまま直接接続します。
以上が複線図の書き方になります。
複線図にすることにより、電線が何本必要か、どの電線を接続すれば良いか分かるようになります。
書いた複線図の回路確認
実際に配線をするときや電気工事士などの試験の時でも書いた複線図が間違っていないか一度確認しましょう。
十分に分かっておられると思いますが、確認することは大切です。
まずはコンセント部分から確認していきましょう。
図の通り、コンセントにはLとNが直接接続されているので、電源をオンにすると常に電気が流れている状態になります。
次に電灯を確認します。
電灯はスイッチをONにすることで電灯に電気が流れ、点灯します。
余談になりますが、今回の例ではコンセントと照明を一緒の回路にしましたが、実際の回路ではコンセントと照明は別々の回路にすることをおススメします。
実例として、実家のリビングが電灯とコンセントが一緒の回路であり、コンセントで電気の使い過ぎにより、ブレーカーがオフになったことがあります。
そのときは電灯も一緒に消えてしまい、部屋が真っ暗になってしまいました。
そんな経験もあり、自宅は電灯とコンセントを別々の回路にしています。
その他の複線図例
住宅でよく使用される回路を3つ紹介していきます。
「2つの電灯を2か所で個々のスイッチで点滅」
「1つのスイッチで2つの電灯を点滅」
「2つのスイッチで1つの電灯を点滅」
2つの電灯を2か所で個々のスイッチで点滅
「イ」のスイッチで「イ」の電灯をオンオフ、「ロ」のスイッチで「ロ」の電灯をオンオフする回路です。
こちらを複線図で書くと下の図のようになります。
では、細かく説明していきます。
詳細説明
まずは単線図のように器具を配置します。
つぎは接地側の線と電灯の「イ」「ロ」をつなぎます。
そのあとは電源の非接地側(L)の線をスイッチを通して、電灯と接続します。
「イ」の電灯は「イ」のスイッチを通して接続します。
「ロ」の電灯は「ロ」のスイッチを通して接続します。
ここでの注意点として、接地側の線は「イ」のスイッチから分けてもらいます。
以上で、2灯2か所を個別で点滅させる回路の完成です。
1つのスイッチで2つの電灯を点滅
1つのスイッチで2つの電灯を点滅する回路です。
3つ以上の電灯でも考え方は同じです。
複線図にすると以下の図になります。
詳細説明
単線図をもとに器具を配置します。
接地側の線と2つの電灯をつなぎます。
電源の非接地側(L)の線をスイッチを通して、2つの電灯と接続します。
以上で完成です。
2つのスイッチで1つの電灯を点滅(3路回路)
階段や入り口が二つある部屋など、1つの電灯を2か所のスイッチでオンオフする回路です。
2か所で点滅したい場合は3路スイッチを2つ使用します。
複線図にすると以下の図になります。
三路スイッチの図記号は「丸」を3つ用いて表します。
つなぐ箇所が沢山あり、接続する時に混乱しやすいですが、これもルールがあります。
ルールを覚えれば迷うことはありません。
ポイント
・1つの丸側は電源か負荷側(今回の場合は電灯)に接続
・反対側の丸2つはもう一つの3路スイッチの丸2つとつなげる
詳細説明
単線図をもとに器具を配置します。
接地側の線と電灯をつなぎます。
電源の非接地側(L)の線を左側のスイッチと接続、右側のスイッチと電灯を接続します。
左側スイッチの丸2つと右側スイッチの丸2つをつなげる。
以上で完成です。
今回の例のような2か所での点滅は3路スイッチを使用しますが、1灯を3か所以上で点滅させたい場合は3路スイッチと4路スイッチをセットで使用します。
3路スイッチや4路スイッチの動作など、詳しく知りたい方はコチラをご覧ください。
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電気工事初心者の方必見!スイッチの種類や回路・配線方法
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参考:電線の本数について
単線図に斜め線が記載されていることがあります。
これは必要な電線本数(条数)を表しています。
最後に紹介した「2つのスイッチで1つの電灯を点滅」の必要本数を単線図に追記すると以下になります。
単線図に電線本数が書かれていると、複線図を書かずに電線が何本必要かすぐに分かります。
しかし、設計者や製作者によっては、単線図の電線本数は省略されていることがあります。
まとめ:複線図の書き方
今回は単線図から複線図への書き方を3ステップで説明いたしました。
この3ステップのルールを覚えれば複線図を書けるようになります。
複雑な回路になっても考え方は変わりません。
最初は慣れないかもしれませんが、練習するとスラスラ書けるようになりますので、諦めないで練習してみて下さい。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。