工場では、製品を作る部屋や機械室、事務作業を行う事務所、倉庫など、色々な用途の空間があります。
作業環境が暗いと、作業員が働きにくい環境になってしまうのはいうまでもありせん。
照明は安全かつ快適な空間にするために必要であり、適切な明るさを保つためには"照度"という指標が参考となります。
今回は「照度について」や「工場における照度の基準値」について紹介します。
電気屋として知っておいて損することはありませんので、ぜひ読んでみて下さい。
動画版もあります。
そもそも照度とは?
照度とは単位面積あたりに差し込む光の量をさし、単位はlx(ルクス)としてあらわされます。
一見、光源から発生する光の量と間違えやすいのですが、照度はその光によって照らされる面の明るさを意味します。
よくわかりにくいという方は、電気スタンドについて考えてみるとよいかもしれません。
電気スタンドから発生した光は机上の物体を明るくしてくれます。そのおかげで夜間でも本を読んだり、書き物をしたりできるわけです。
ただ、電気スタンドから離れた場所はあまり明るくなりません。
スタンドから離れた場所で本を読んだり書き物をしたりする方はほとんどいないと思います。
このように光源の光の量が同じでも、照らされる場所によって明るさが異なります。
光源から発生した光によって照らされる場所の明るさを示すのが照度になります。
工場における照度の基準
工場では作業場所が暗いと、作業をミスしてしまったり、作業が行えなかったりするケースがありえます。
ただし、必要以上に明るくても電気代がかかってしまい、省エネできなくなってしまいます。
そのため、日本では作業状況に応じた照度基準が定められており、事務所、工場、学校、商業施設などに区分されています。
工場の照度は「JIS Z9110照明基準総則の5.4工場」を参考にすると、基準は下記の表のとおりです。
照度(lx) | 場所 | 作業 |
75~150 | 出入口や通路 | ごく粗な作業 |
150~300 | 電気室や空調機械室 | 粗な作業 |
300~750 | 制御室や会議室 | 製造工程における一般的な視作業 |
750~1500 | 設計室や事務室 | ・繊維工場における選別や検査
・印刷工場における植字や校正の作業 ・化学工場における分析作業 |
1500~3000 | 制御室 | 精密機械や電子部品の製造や、印刷工場などにおける極めて細かい作業 |
照度の基準が1番低い、「ごく粗な作業」とは明色のもの、対比の強いもの、がんじょうなもの、さほど高価でないものの包装や荷造作業のことを差します。
3000lxなど高すぎると外観検査をしている方から眩しくて目が痛いと言われてました。
また、労働安全衛生規則第604条によると、照明の最低基準照度は以下の通りです。
作業の区分 | 基準 |
精密な作業 | 300lx以上 |
普通の作業 | 150lx以上 |
粗な作業 | 70lx以上 |
労働安全衛生規則第604条
ちなみに、JIS(日本産業規格)についてはあくまで法規とは異なるので、適合しない照明計画を禁止するものではなく、目安としての参考値にします。
労働安全衛生規則に関しては、規定値を下回ってしまうと、事業者に対して罰則の措置が取られるケースがあり、注意する必要があります。
照度の測定方法について
照度は光源からの距離によって変わるので、測定する場所によって異なります。
適当に測定すると正しい結果を得ることができません。
そこで、JIS規格で照度・輝度測定(JIS-C-7612)で測定方法が規定されています。
ここでは測定方法の詳細は割愛しますが、照度測定は水平面の照度を測定します。
例えば、事務所に机や作業台がある場合は、その上面または上面5cm以内の面で測定します。
まとめ:工場の照度を見直して事故を防止
今回は工場の照度についての基準をご説明しましたが、作業場所によって必要な照度が異なります。
ただし、基準の照度を守れば必ずしも作業員にとって快適な環境を保てるわけではありません。
現在は少子高齢化にともない、高齢者が労働者として働く機会が増えつつあります。
高齢者の方は近距離の視力が著しく低下する傾向があるので、通常よりも照度を高くすることが望ましいといわれています。
もちろん、年齢を問わず従業員にとって作業しづらい環境は、知らないところで放置されているケースも少なくありません。
暗い場所には危険がともなうので、最悪の場合は作業者がケガをすることも想定されます。
作業者の方で、職場の照度が気になるところがあれば責任者の方に照度の見直しを依頼してみるのも良いと思います。
また、管理している方は、現場で働いている従業員の声に耳を傾け、改めて照度の見直しを行ってみてはいかがでしょうか。