こんな方におすすめ
- 防爆機器について知りたい方
- 危険場所の種類について知りたい方
- 防爆構造の種類について知りたい方
今回は防爆機器って何?ということで電気機器の防爆仕様、危険場所、防爆構造について説明していきたいと思います。
この防爆機器ですが、危険場所でなければ使用する機会がありません。
もしかしたら、この記事を見ている方で働いている工場などに危険場所がない方がいらっしゃるかもしれませんが、そんな方でも防爆機器の知識について知っておいて損はありません。
注意
粉じんも防爆の対象となりますが、今回の記事では割愛いたします。
本記事と同じ内容を動画でも説明しています。
動画が好きな方はこちらからご覧ください。
目次
防爆機器とは
漢字で表す通り、爆発を防ぐ機器のことです。
爆発は可燃性ガス又は可燃性液体の蒸気が存在した爆発性雰囲気と点火源が同時に共存したとき、爆発または火災になる恐れがあります。
共存しなければ、爆発する恐れがありませんが、実際の現場から可燃性ガスなどを取り除くというのは、現実的に難しいです。
そこで、押し釦やリミットスイッチなどの電気機器を使用する際に、電気機器の電気火花や高温部が点火源とならないように爆発を防ぐ構造になっている防爆機器を使用します。
これが防爆対策の基本であり、点火源となる電気設備に防爆対策を講じます。
爆発には至らないという考え方です。
防爆機器についてですが、可燃性ガスなどの爆発の危険がある危険場所で点火源となる電気機器に防爆対策を講じることが労働安全衛生法などで義務付けられています。
防爆仕様に対する考え方
では、どうやって電気機器を防爆仕様にしているのか?
次の3つがあります。
防爆の考え方
①点火源の防爆的隔離
②機器の安全度の増強
③着火能力の本質的抑制
①の点火源の防爆的隔離とは点火源を周囲のガスから隔離する方法です。
②機器の安全度の増強とは安全度を増して、故障を防止することにより、点火源とならないようにする方法です。
③着火能力の本質的抑制とは点火源の着火能力を抑制する方法です。
危険場所とは
危険場所とはガソリン、シンナー、プロパン、エタノールなどの可燃性物質を扱う工場や作業所内で爆発の危険のある濃度に達するおそれのある場所のことを言います。
危険場所は爆発性雰囲気の存在する時間と頻度で、3つに分類されます。
分類の理由として、危険性のレベルに応じて、適正な防爆仕様の電気機器を選定する為です。
可燃性物質を扱う場所、工場・事業場(じぎょじょう)の例として、ガソリンスタンド、火力発電所、医薬品製造工場、石油化学工場、半導体製造工場などが挙げられます。
危険場所の種類
危険場所は、蒸気またはガスによる爆発性雰囲気の生成頻度および持続時間によって「特別危険箇所」「第一類危険箇所」「第二類危険箇所」の3つに区分されます。
爆発性雰囲気
可燃性ガスや爆発性ガスが空気と混合した状態のことをいいます。
特別危険箇所
爆発性雰囲気が通常の状態において、連続、または長時間にわたって、もしくは頻繁に存在する場所です。
0種場所、ゾーン0とも呼ばれています。
参考までにアメリカ API(米国石油学会)のRP505では爆発性雰囲気の生成時間が年間1000時間を超える場合をゾーン0の目安としています。
場所の例として、可燃性ガス、液体が保管されている容器やタンク内部です。
第1類危険箇所
通常の状態において、爆発性雰囲気を生成するおそれがある場所をいいます。
1種場所、ゾーン1とも呼ばれています。
API(米国石油学会) のRP505では爆発性雰囲気の生成時間が年間1000時間から10時間の場合をゾーン1の目安としています。
場所として、蓋の開閉によってガスを放出する開口部付近や点検などでガスを放出する開口部付近などが挙げられます。
第2種危険箇所
通常の状態において、爆発性雰囲気を生成する可能性が小さく、また生成した場合でも短時間しか持続しない場所を言います。
API(米国石油協会) RP50では5通常の状態において、爆発性雰囲気の生成時間が年間10時間から1時間の場合をゾーン2の目安としています。
2種場所、ゾーン2とも呼ばれています。
場所の例として、フランジ接合部のパッキン劣化により、ガスが漏洩する可能性のある場所やゾーン1の隣にある部屋で爆発性雰囲気がまれに侵入する場所が挙げられます。
防爆構造の種類
防爆構造の種類 | 構造規格による防爆構造の記号 | 整合指針による防爆構造の記号 |
耐圧防爆構造 | d | EX d |
内圧防爆構造 | f | EX p |
安全増防爆構造 | e | EX e |
油入防爆構造 | o | EX o |
本質安全防爆構造 | ia又はib | EX ia又はib |
樹脂充填防爆構造* | (ma又はmb) | EX ma又はmb |
非点火防爆構造* | (n) | EX n |
特殊防爆構造 | s | EX s |
*:規格の内容及び表示は整合指針
電気機器の防爆構造は機器のクラス分けに応じて使用可能なガスの種類が定められ、8種類あります。
防爆性能を示す表示記号がありますが、防爆性能の記号表示は危険場所の種別、爆発性ガスの危険特性、使用条件などに適合した機器を選定するためにあります。
また、記号には従来の規格である工場電気設備防爆指針の「構造規格による表示」とIEC規格に整合した「国際整合防爆指針による表示」の2つがあります。
国際整合防爆指針は整合指針とも呼ばれており、記号にEXを表示します。
注意点として、日本ではどちらかの規格に認証された機器を使うことができますがアメリカやヨーロッパなど海外の規格だけで認証されている機器は日本で使用することができません。
耐圧防爆構造
密閉された爆発に耐える容器に電気部品が覆われている構造です。
爆発性ガスが、容器の内部に侵入して爆発が生じた場合でも、容器が爆発圧力に耐え、かつ爆発による火炎が外部の可燃性ガスまたは蒸気に点火しません。
こちらは日立の防爆モーターのカタログに載っている耐圧防爆構造のモーターです。
通常のモーターより大きく頑丈な感じです。
内圧防爆構造
容器の内部に保護気体と呼ばれる清浄な空気、窒素などの不活性ガスを加圧して、容器外部の爆発性ガスが浸入するのを防止した構造です。
イメージですが、こちらは宮木製作所のカタログに載っている内圧防爆構造の制御盤です。
安全増防爆構造
通常の状態では点火源となる恐れがない電気機器において、電気的、機械的に安全度を上げ、電気火花や異常高温の発生を抑える構造です。
例として、上図のように変圧器の絶縁巻線の温度上昇は一般規格より低く抑えるなど、ありますが、他の構造と比較して、防爆性能が低いです。
本質安全防爆構造
電気機器が正常状態および仮定した故障状態において、電気回路に発生する火花、または熱が、可燃性ガス、蒸気に点火するおそれがないことが点火試験等により確認された構造です。
最も安全な防爆構造ですが、エネルギーが小さい電気機器にしか使えません。
上図の左側部分にある本安関連機器についてですが、これは本質安全防爆性を保持する為に必要な機器であり、安全保持器、バリアと呼ばれています。
本質安全防爆構造には性能区分としてiaとibの2つがあります。
iaは2つまでの故障を仮定し、ibは1つの故障を仮定しています。
iaのほうがグレードは上でゾーン0で使用することが可能です。
危険場所の区分に適応する防爆構造
規格 | 防爆構造の種類 | 記号 | ゾーン0 | ゾーン1 | ゾーン2 |
整合指針 | 耐圧防爆構造 | EX d | × | 〇 | 〇 |
内圧防爆構造*1 | EX p | × | 〇 | 〇 | |
安全増防爆構造 | EX e | × | 〇 | 〇 | |
油入防爆構造 | EX o | × | 〇 | 〇 | |
本質安全防爆構造 | EX ia又はib | 〇(iaのみ) | 〇 | 〇 | |
樹脂充填防爆構造*2 | EX ma又はmb | 〇 | 〇 | 〇 | |
非点火防爆構造*2 | EX n | × | × | 〇 | |
特殊防爆構造*3 | EX s | - | - | - |
*1:動作方法によってはゾーン1に適さない場合ある。
*2:法的に構造規格として扱われるが、規格の内容と表示は整合規格
*3:他の防爆構造も適用されているモノが多い。
上の表は整合指針の場合になります。
例えば、耐圧防爆構造と安全増防爆構造はゾーン1とゾーン2で使用することができます。
内圧防爆構造もゾーン1とゾーン2で使用することができますが、保護の動作方法によってはゾーン1に適さないものがあります。
本質安全防爆構造は性能がiaで故障を 2つまで考慮した機器であればゾーン0でも使用できます。
まとめ:防爆機器
今回は防爆に関する概要的な部分をお話ししました。
最後に整理します。
ポイント
・防爆機器とは電気機器の電気火花や高温部が点火源とならないように 爆発を防ぐ構造をした機器のこと
・危険場所とは可燃性物質を扱う工場や作業所内で爆発の危険のある濃度に達するおそれのある場所のこと(3つに区分される。)
・防爆構造は8種類に分類され、構造規格による表示と国際整合防爆指針による表示がある。
少しでも参考になれば幸いです。
参考文献・サイト
工場電気設備防爆指針