あたりまえに設置されていて電気を使う時には欠かせない各種“盤”ですが、何が違うか気になりませんか?
特に分電盤と配電盤に至っては名前も似ているので、役割や構造を違いなどを理解するのに混乱します。
広義の意味ではどれも"盤"ですが、盤は役割によって制御盤・分電盤・配電盤等に分類することができます。
そこで、本記事では「制御盤・分配盤・配電盤・動力盤」の4つの“盤”について、違いが簡単にわかるように徹底解説していきます。
これから電気関係の仕事をやっていこうと考えている方、新米の方は、ぜひ参考にしてください。
動画でもブログと同じ内容を解説しているので、動画のほうが良いという方はこちらをご覧ください。
目次
制御盤・分電盤・配電盤・動力盤の役割と構造
さっそく4種類の“盤”について解説していきますが、まずは下記の表をご覧ください。
盤の種類 | 役割 |
制御盤 | 機械を操作・制御するための盤 |
分電盤 | 電気を各所に配るための盤 |
配電盤 | 電力会社からの電気を受け取って適した電圧に変圧するための盤 |
動力盤 | 機械を動かすために電気を供給する盤 |
名前が似ている盤もありますが、こちらの表を見るだけでざっくりと違いが認識できるかと思います。
詳しい構造や役割については、以下で詳細に解説していきますので、より詳しく知りたい場合は一緒に見てきましょう。
制御盤:機械の操作や制御を行う盤
制御盤はその名の通り、機械を制御する"盤"で金属製や樹脂製の箱です。
制御盤は大小さまざまなサイズがあり、機械の背面や機械の本体内部や少し離れたところに設置されます。
盤の表面にスイッチやランプ、中にはリレーやインバーター、PLC、ブレーカーなどたくさんの電気部品が詰め込まれています。
それらの部品で機械のモーターやシリンダー、コンベアなどを運転・停止させたり、異常時はブザーやランプでお知らせしたりします。
理由としてクリーンルームでの雑菌をできるだけ増やさないためです。
制御部品に関して少し詳しく知りたい方はコチラの記事をご覧ください。
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分電盤:電気を配る盤
わたしたちにとってもっとも身近な“盤”が分電盤で、もしあなたが自宅でこの記事を読んでおられる場合は、今すぐにでも確認することができます。
さっそくブレーカーがある場所へ向かってください。
ボックスに入ったたくさんのブレーカーがあり、トイレやお風呂など、それぞれの部屋の名前が書いてあるはずです。
それが「分電盤」です。
ここまで見てもらえればすでに理解できていると思いますが、各所に電気を送る役割を持っている“盤”です。
分電盤は家庭だけではなく、ビルや工場といった大規模な施設までかならず設置されています。
構造については御覧の通りで、各部屋へ電気を送るためのブレーカーがあるのみと、直感的に理解できる作りとなっています。
分電盤の中にある電気部品ということで、ブレーカーの役割についても簡単に説明しておきます。
ブレーカーには過剰な量の電気を自動的に遮断したり、漏電を感知して落ちたりと、火災を未然に防ぐのに重要な役割を持っています。
ドライヤーや電子レンジなどの電気をたくさん使用する電化製品を同時に使い、ブレーカーが落ちた経験はだれでも一度はあるかと思います。
そのまま使い続けていると火災になることも考えられるため、ブレーカーはわたしたちが安心安全に電気を使うための重要な電気部品と言えます。
ブレーカーについて、詳しく知りたい方はコチラの記事をご覧ください。
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配電盤:電気を変圧する盤
分電盤とよく勘違いされるのが「配電盤」で、名前こそなんとなく似ているものの、持っている役割は異なります。
各所に電気を配るのが分電盤なら、配電盤は分電盤に電気を送る役割を担っており、流れとしては、配電盤で電気を受け、分電盤に流し、それぞれの部屋に電気が届くというイメージです。
配電盤は屋外や建屋内に設置されます。
屋外の場合は上記図のようなキュービクル式と呼ばれる箱の中に入り、建屋内の場合は下記の電気室や配電室といった部屋に設置します。
また配電盤にはもう1つ、大きな役割があります。
それが「変圧」です。
通常、電力は発電所から送電線を伝って各家庭やビル、工場などに送電されますが、そのままでは電圧が大きすぎて使うことができません。
そこで配電盤の中には電圧をさげる変圧器(トランス)が設置されています。
変圧器で100Vや200Vと適した電圧に下げられ、分電盤へと送電されます。
配電盤は変圧器以外に変圧器の温度監視や漏れ電流の監視、制御のために必要なメーター、ブレーカーなどで構成されています。
変圧器に関して詳しく知りたい方はコチラの記事をお読みください。
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変圧器(トランス)はなぜ必要?役割や原理、使用例を電気屋が説明!
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参考:スイッチギア
JEM規格より3.6k~36kvの高圧受電設備をスイッチギアまたはコントロールギアと呼ばれています。
動力盤:電気を供給する盤
最後にお伝えする「動力盤」は、文字通り機械を動かすための電気を供給する“盤”です。
工場やビルなどで使われているポンプやエアコン、ファンなどを供給するために設置します。
実は分電盤と動力盤には大きな違いがなく、どちらかと言えば分電盤の種類の1つと言えます。
「えっ!?」と思った方もいらっしゃるでしょう。
よくよく考えてみると、分電盤も各部屋に電気を流す役割を持っているので、電源を供給していることになります。
ただ、それぞれの“盤”は現場や設置場所に適したように作られるため、使い方や目的などで動力盤、分電盤と区分をされることがあります。
たとえば、ショッピングセンターなどの壁に埋め込んで盤を見てください。
動力盤を設置している場合があります。
なぜ動力盤と言えるのかと、動力盤の表示プレート(銘板)にはP-1等と表示されていることがあります。
このPは「Power(動力)」の略と表記されていることが多いからです。
ちなみに、動力盤は盤内で機械の制御をおこなわずに、基本的に機械側で行うのが一般的です。
ほかにも、動力盤の仲間である電灯盤という照明(電灯)やコンセントへ電気を供給する盤があります。
そちらにはL-1等と表記されていることがあります。
Lは「Light(灯)」の略です。
盤によっては動力盤と電灯盤が一緒になっている場合もあります。
動力制御盤
工場やビル内には「動力制御盤」と記載された盤があることがあります。
「動力制御盤」は電力供給と制御を行う役割をもっています。
これに関しては制御盤に近いイメージとして覚えておけば大丈夫です。
このように、表記や役割で動力盤か分電盤か等の見分けがつきます。
参考:4種類の盤は現場で誰かが作るもの?
なんとなくでも4種類の盤の違いが理解できたと思いますが、各種盤がいつどのタイミングでどこから導入されるのか気になりませんか?
分電盤や動力盤、配電盤は、盤を作っている会社(盤屋)に依頼することがほとんどです。
建屋によって仕様が異なるため、1つずつオーダーメードで製作して頂きます。
制御盤は機械設備のメーカーが作ることもありますし、メーカーが外注していることもあります。
まとめ:盤の種類
多種多様な役割を持った盤は様々な名称で呼ばれており、電気を供給するのに必要なモノです。
今回ご説明した4種類の盤の違いを覚えておくと、基本的に他の方と会話しても共通認識として通じると思います。
今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。