こんな方におすすめ
- 変圧器の役割を知りたい方
- 変圧器の原理を知りたい方
- 変圧器の種類を知りたい方
トランスともよばれる変圧器ですが、あなたはなぜ必要なのか考えたことはありますか?
ひと昔前は海外旅行へ行くときに「変圧器」を持って行きましたが、最近は海外の電圧に対応している電化製品が多いので手に取る機会が減ったと思います。
そんな変圧器は普段の生活で意識することはありませんが、実は私達の生活の中で様々な場所で使用されています。
そこで今回は現役の電気屋である私が、「なぜ変圧器が必要か」「変圧器の原理」「変圧器の種類」などを説明いたします。
この記事を読んで、一緒に勉強しましょう。
目次
変圧器が必要な理由は「電圧を揃えるため」
まずは、「なぜ変圧器が必要なのか」について解説していきます。
そのためには、そもそも変圧器とはなにか、というところから始めなくてはなりません。
変圧器とは?
変圧器はトランスとも言い、簡単に説明すると、電圧を上げたり(昇圧)下げたり(降圧)できる機器のことです。
ご存知の通り、発電所から供給される電気は、電線を通って各家庭に届きます。
ただ、電線を通っている状態の電気は非常に電圧が高く、そのままの状態では家庭では使うことができません。
そこで、電柱の上の部分に設置されているポリバケツのような機器(変圧器)を通して、降圧する必要があります。
分かりやすくたとえると、小銭しか入らないガチャポンにお札を入れようとしても無理ですよね?
電気も同じで、機器にあった電圧に調整しないと使えないです。
写真ような変圧器は電柱の上にあるので柱上変圧器(ちゅうじょうへんあつき)と呼びます。
柱上変圧器は6600Vの電圧を100V/200Vに降圧する働きをしています。
電気図面上での変圧器の文字記号は「T」や「Tr」と表します。
図記号は色々ありますが、主に使用する図記号を下記に紹介します。
名称 | 文字記号 | 電気用図記号(一例) |
単相変圧器 | T、Tr | |
三相変圧器 |
単相や三相の違いについてはコチラの記事をお読みください。 続きを見る 続きを見る 続きを見る
押さえておきたい電源の種類|直流と交流の違い
他の電気用図記号を知りたい方はコチラの記事をお読みください。
シーケンス図の電気図記号シンボルとは?よく使用する記号一覧
単線図、複線図の違いを知りたい方はコチラの記事をお読みください。
電気図面の種類とは?単線接続図、複線接続図など6種類を紹介
電圧は場所によって異なる
電圧は場所によって異なります。
一般家庭の100Vがメインでコンセントに使用し、200Vはエコキュートやエアコンに使用します。
しかし、隣にある工場はそうはいきません。
大型の機械を動かさなければならないので、当然電圧も大きくなります。
工場内には200Vの機器を動かしたり、場合によっては400Vの機器を動かすこともあります。
ですので、効率を考慮すると同じ電線からでも家庭には100Vと200Vを、工場には6600V以上を送れるように変圧器で電圧を調整する必要があります。
電圧を無視して使ったらどうなるの?
もし仮に電圧を無視して100V用の電化製品を200Vのコンセントに接続して使用すると、どうなるのでしょうか。
答えは簡単で、電化製品が故障します。
100V対応のドライヤーに、200Vもの電気を注ぐわけですから、水がなみなみいっぱいに入ったコップにさらに水を入れるのと同じであふれてしまいます。
実際にはコンセントやプラグの形状が異なるので、間違えて差すことはほぼありませんが、最悪の場合は出火して火災の原因にもなりかねません。
注意すべき点は海外へ行くときに日本で使用していた電化製品を使用する時です。
ただ、最近では先ほど申し上げたとおり、ノートパソコンやスマホの充電器、デジカメは100V~240Vに対応したユニバーサル仕様が多いです。
ユニバーサル仕様の電化製品であれば海外の電圧に対応していますので、あとは変換できるコンセントプラグを用意すれば大丈夫です。
参考:使用できる電圧の確認方法
持っている電化製品の使用できる電圧を確認するには電化製品に貼られているラベルなどの表示を見ます。
使用できる電圧範囲が広いユニバーサル仕様の電化製品
使用できる電圧範囲が狭い電化製品
変圧器が電圧を自由に変えられるのはファラデーの法則
変圧器の役割がわかったところで、次に気になるのは、「なぜ変圧器は電圧を自由自在に変えられるのか」だと思います。
それについては専門的な話になってしまいますが、できるだけわかりやすくお話していきます。
キーワードは「ファラデーの法則」です。
ファラデーの法則には「電磁誘導」と「電気分解」の2つあり、今回は「電磁誘導」の法則です。
変圧器の中身を知ろう
電圧を変換する変圧器ですが、どういう仕組みで電圧を上げたり下げたりするのでしょうか。
その仕組みを理解するためには、まずは変圧器の中身から見ていく必要があります。
変圧器の中には1次コイルと2次コイルという、鉄心にコイルを巻きつけたものと、余計な場所から電流が入らないように遮断する絶縁体、電気が熱となって逃げる損失を防ぐための冷却装置が設置されています。
電圧はファラデーの電磁誘導の法則によって変圧される
この中で電圧を調整するのは1次コイルと2次コイルで、1次コイル側が入力側、2次コイル側が出力です。
1次コイルと2次コイルではコイルの巻き数に違いがあり、この差によって変圧が可能になります。
仕組みとしては、1次コイルに交流電圧が流れるとコイルの中心にある鉄心に磁束が発生、それが2次コイルと交わります。
これを鎖交と言い、鎖交した磁束が変化した際に電圧が発生する性質を利用して、変圧しているというわけです。
この動きをファラデーの電磁誘導の法則、又はファラデーの誘導法則と言います。
磁束とは
磁力線の束のことをいいます。
誰もが理科の実験で磁石の周りに砂鉄を巻いた経験があるかと思います。
そのとき、N極からS極に向かって多数の模様線が発生したと思いますが、この模様線を磁力線と言います。
式で表すと以下のようになります。
V1:V2 = N1:N2
V1:一次側電圧[V] V2:二次側電圧[V]
N1:一次側コイル巻き数[巻] N2:二次側コイル巻き数[巻]
ちょっとわかりにくいと思いますので、すごく簡単に説明します。
左から入ってきた大きな電圧がファラデーの電磁誘導の法則によって右から抜けるときに小さな電圧に変圧されていると思ってもらえれば大丈夫です。
1次側と2次側のコイルの巻き数により、発生する電圧を自由に変えることができます。これは交流電源の変圧器に利用されています。
変圧器の使用例
変圧器は様々な部分に色々な大きさで使用されています。
身近な使用例として、先程説明した電柱の上にある変圧器のほかに、ノートパソコンのACアダプターやその他の電化製品の電気回路に小さなサイズの変圧器が使われています。
大きなサイズの変圧器としてはコンビニ、ショッピングセンターや工場などの屋外の端にあるに白い箱の中に入っています。
その中の変圧器は電圧を6600Vから200Vに降圧させています。
変圧器は鉄の固まりのため、他の電気機器と比較すると故障率は少ないと言えます。
制御盤内の変圧器について
生産設備などの制御盤内は主に単相変圧器を使用します。
単相変圧器には降圧、昇圧、マルチなど様々なタイプがありますが、ほぼ降圧を目的にします。
用途してパソコン用の電源として利用するため200Vを100Vにします。
パソコンで生産設備の動きをコントロールしているPLCと接続し、PLC内部のプログラムや設定を確認したり、変更したりします。
最近はノートパソコンでバッテリーが長時間持つタイプがありますが、機械調整には結構時間がかかることがありますのでコンセントがあると安心です。
接続するとブレーカーがトリップします。
単相変圧器の種類
単相変圧器には「単巻トランス」と「複巻(絶縁)トランス」があります。
それぞれメリットとデメリットがありますが、私は総合的に判断し、複巻トランスを使用しています。
種類 | メリット | デメリット |
単巻 | 小型で安い | 1次側と2次側が絶縁できない、ノイズに弱い |
複巻 | 1次側と2次側を絶縁できる | 単巻より大きくて高い |
まとめ:変圧器
変圧器の役割や仕組み、種類についてお伝えしてきましたが、わたしたちの日々の生活にはなくてなならないものだということがお分かりいただけたと思います。
普段、何気なく使っている電化製品も、変圧器があるからこそ安心安全に使えています。
地味な機器ですが、「電圧を調整できる大切な機器」と覚えておくと良いでしょう。