配線用遮断器と漏電遮断器の違いは分かりますでしょうか?
配線用遮断器と漏電遮断器は、ともに電路の安全確保にとって重要な装置です。
そのため、基本的な構造は似ているのですが、その原理や実際に使う場面は少し違います。
今回は、そんな二つの機器の違いについて、詳しくご紹介します。
動画でもブログの内容を解説しているので、動画のほうが良いという方はこちらをご覧ください。
目次
配線用遮断器とは何か
配線用遮断器は、一言で言えば「過電流遮断機能」を備えた安全装置の一種です。
ブレーカー、MCCB(Molded Case Circuit Breaker)、 MCBとも呼ばれています。
以下に、詳細をまとめていきます。
配線用遮断器の原理
配線用遮断器とは、機器にあらかじめ設定された電流値を超えた場合に、自動で回路を遮断して電路を保護し、過負荷電流による機器の損傷やケーブルの焼損を防止できるという仕組みです。
具体的にはどのような働きをする?
多くの方にとってイメージしやすいのは、家の中で掃除機、電気カーペットなどの消費電力の高い家電を複数同時に使った場合です。
たくさん家電を使用していて、急に照明が暗くなったり、家電の電源がオフになった経験はないでしょうか。
20Aの電流が上限だと仮定すると、その数値を超えるような家電を同時に使った場合、自動で電流の遮断が行われるという点に特徴があります。
いわゆる、ブレーカーが落ちる(トリップする)現象のことです。
AF(アンペアフレーム)とAT(アンペアトリップ)
ブレーカーの容器の大きさ・最大定格電流を表しているものをAF(アンペアフレーム)と言い、この値が大きくなるにつれ、容器の寸法や遮断容量が増加します。
上記の例で言えば、20AFならば理論上20Aまで適用されるます。
また、ブレーカーの定格電流を表している単位はAT(アンペアトリップ)で、20ATの場合は20Aが定格となります。
このことから、AF(アンペアフレーム)はブレーカーが耐えられる電流の値を差し、AT(アンペアトリップ)はブレーカーが落ちる電流の値になります。
例えば【100AF/80AT】などとブレーカーの容量が表記されていたなら、理論上は100Aまで大丈夫ですが、実際には80Aでトリップするよ、といった意味合いです。
ただ、ATをごくわずかでも超過した場合に遮断が行われるわけではなく、瞬間的な過負荷の場合、すぐに遮断が起こることはありません。
ケーブル側にも、短時間であれば過負荷電流を流せる能力が備わっているので、すぐに火災などの事故につながる危険性はほぼ無いものと考えてよいでしょう。
アンペアフレームの見方
50AFと100AFのブレーカーでは外形寸法はほとんど同じで、違いはネジの大きさ等です。
メーカーによってはアンペアフレームが記載されていないブレーカーがあります。
アンペアフレームの大きさを確認した場合は、ブレーカーの型式を確認すると良いです。
大体のメーカーは型番にアンペアフレームサイズを表記しています。
富士電機のブレーカーで「BW50EAG」という型式の「50」は50AFを意味します。
動作特性について
配電用遮断器を説明する際には、反現時特性の話が出ます。
これは、電流値の1倍未満までは動作せず、大電流になればなるほど瞬間的に動作するという特性です。
瞬間的に発生する大電流により遮断器が不用意に動作しないよう、考慮されて生まれた機能とも言えます。
この配線用遮断器にかかる動作特性というのは、メーカーごとに違います。
そして、各メーカーごとに選定表(動作特性図)が公開されています。
一例を挙げると、
「定格電流4Aのブレーカーに対し、どのくらいの電流が流れると何秒で動作を停止するか」
といった内容になります。
電流が倍なら40秒・5倍なら6秒・10倍なら0.4秒といったように、電流が大きければ大きいほどトリップに至る時間は短くなります。
選定では時間と電流の関係を表した動作特性図を読み取り、負荷の特性に合わせましょう。
迷ったときはメーカーに問い合わせると良いです。
配線用遮断器の種類
次に、配線用遮断器の種類について、いくつか触れていきたいと思います。
主に、トリップを起こすトリップバーが動く方式による違いと、用途による違いとで分けられます。
方式による違い
方式による違いとしては、主に3種類に分けられます。
・熱動電磁式
バイメタル、電磁石の力でトリップバーを動かす方式です。
過電流が流れることによりバイメタルが加熱され、それに伴い可動鉄片がトリップバーを動かしてトリップするという仕組みになります。
ちなみにバイメタルとは、熱膨張率が異なる2枚の金属板を貼り合わせたものを言います。
・完全電磁式
電磁石の力によってトリップバーを動かす方式です。
普段は制動ばねが作動していますが、電磁力が制動ばねの力よりも大きくなると可動鉄片が動いて、トリップバーを動かす仕組みになっているものを指します。
金属の熱変を想定する構造となっておらず、電磁石の力に依存する点で、熱動電磁式とは異なります。
・電子式
電子回路による演算によりトリップを引き起こす仕組みになります。
回路が組み込まれているため、過電流・大電流が流れると、最大電流に応じて各時限回路が動作し、トリガー回路と呼ばれるトリップコイルを動かす仕組みが作動してトリップするという構造になっています。
電子式はトリップするときの電流値が調整できるので、便利です。
用途による違い
用途による違いとしては、主に5種類に分けられます。
・安全ブレーカー
小型のブレーカーで、分電盤における分岐ブレーカーとして用いられることが多いものです。
主に住宅用として使われ、10~30Aの小電流回路を保護するものを指します。
・モーターブレーカー
電動機(モーター)の保護を目的としたブレーカーです。
一般的に、電動機が動き出す時の電流(始動電流)は全負荷電流よりも高いため、始動時の電流の大きさではトリップしないような構造になっているという特徴があります。
・単3中性線欠相保護付ブレ-カー
「単相3線式」配線において、中性線が欠相したときに過電圧を検知して瞬時に電気を遮断できるというものです。
100V、200Vの異なる電圧の規格となっている家電(機器)を同時に使う際に用いられるブレーカーです。
欠相すると、100Vの家電に200Vの電圧がかかります。
このときにブレーカーが正常に機能しないと、家電製品が完全に故障してしまうおそれがあります。
分電盤をイメージすると分かりやすいかもしれません。
・協約形ブレーカー
JIS C 8201-2-1:2011による協約寸法を持つブレーカーです。
ブレーカーの外形寸法は、本来メーカーによって異なるものですが、このブレーカーは全て同一です。
主な用途としては電灯分電盤があります。
かつては、異なるメーカーの規格が乱立することで、電灯負荷の容量変更などブレーカーを交換する際に使用者が困るケースが散見されていました。
そのため、50A以下のブレーカーに関する規格を作り、外径寸法・端子の位置・取り付け方法などの標準を策定したものが始まりと言われています。
・漏電遮断器
こちらは後述しますが、広義には漏電遮断器も配線用遮断器の一種となります。
配線用遮断器の使い方
用途による違いでも説明した部分になりますが、家庭用ブレーカーとして使われることもあれば、電動機の保護を目的として使われることもあります。
ただ、共通して言えることは、電流の通り道である「電線」の保護を主としているということです。
電線の保護をしなければ、最悪の場合は火災につながります。
私の経験になりますが、とある現場で適切なブレーカーが設置されていないまま、機械が運転していて電線がかなり熱くなった
ケーブルの負荷を超えた電流が流れることによって、その先にある家電や電灯・機器などに損傷を引き起こすのであれば、その元を断てば良いという考え方で用いられます。
言わば、電気機器の故障を防ぐための「砦」とも言えるかもしれません。
漏電遮断器とは何か
漏電遮断器は、配線用遮断器の「過電流遮断機能」に加えて「漏電遮断機能」を備えた遮断器になります。
配線用遮断器の高性能版と言えます。
ELCB(Earth Leakage Circuit Breaker)、ELB、漏電ブレーカーとも呼ばれています。
以下に、詳細をまとめていきます。
漏電遮断器の原理
漏電遮断器が作動する原理としては、電源となる導体の電流値の差を機器が監視し、その差が一定の値を超過した瞬間に作動するというものです。
電流の往来を考えた際、通常であれば電流の値は同一になるはずですが、一部の電流が大地に漏洩していた場合、一定の差異が生じることになります。
漏電遮断器は、これを異常と判断して回路を遮断する装置ということになります。
漏電遮断器の種類
漏電遮断器は、感度電流・動作制限の違いによって、高感度、中感度、低感度の3つに分けられます。
以下に、主に使われるものにつき詳細をご紹介します。
高感度形・高速形
主に感電防止を目的とします。
感度電流は5mA~30mAで、動作時間は0.1秒以内になります。
人間などが漏電した電路に接触し、地絡電流が流れた段階で、即時に動作し電路が遮断される構造になっています。
安全性が高い反面、分電盤の主幹に設置した場合、広範囲での停電が起こってしまいます。
設置する際の注意点として、分岐回路ごとに設置するのが基本になります。
高感度形・時延形
感度電流は15mAまたは30mAですが、動作時間は0.1秒~2秒となります。
分電盤の主幹に用いられるもので、漏電の範囲を制限し、広範囲にわたって停電となることを防止します。
高感度・時延形は「上位遮断器を順番に時延する」という意味合いで考えると、分かりやすいかもしれません。
分岐回路に設置されている漏電遮断器よりも後に落ちるイメージです。
中感度形・高速形
主にキュービクルで用いられるもので、キュービクルの配電用遮断器に漏電遮断器を用いる場合、その幹線を保護する目的で用いられます。
感度電流は定格感度電流は50~1,000mAで、動作時間は0.1秒以内となります。
多くの微小な漏洩電流が集中すると、個々の分岐用漏電遮断器では感知できず、幹線など多数の負荷が集中している部分に漏洩電流が集まる可能性があります。
このような場合、高感度形の漏電遮断器で保護できる範囲を超えてしまうおそれがあるため、この形が用いられます。
中感度形・時延形
こちらも幹線の保護用として使用します。
定格感度電流は50~1,000mA、動作時間は0.1~2秒以内です。
電路のこう長(電柱間における水平距離)が大きい場合に採用されることが多く、漏電火災防止目的で使用されます。
漏電遮断器の使い方
漏電遮断器は、一般的なブレーカーに組み込むスタイルのものもあれば、コンセント部分に組み込んだりプラグに差し込んだりして使うものもあります。
それぞれで用途が異なりますから、特徴と合わせてご紹介します。
ブレーカー組込
ブレーカー内部に組み込んだり、ブレーカーとそもそも一体化していたりする構造のものです。
漏電遮断機能が含まれている分、一般的なブレーカーよりも大きな構造となっていて、家庭用の場合はアンペアブレーカーや安全
ブレーカーなどと組み合わさっている形状でイメージすることが多いでしょう。
壁アウトレット組込
家のコンセント部分に組み込むタイプの漏電遮断器になります。
各コンセント単位で交換が可能になる利点を持ちますが、1個あたりの値段が高価になる傾向にあります。
また、配線に柔軟性が生まれるメリットがある反面、その分トリップの原因を特定しにくいというデメリットもあります。
プラグ差込形
電気器具のプラグ差込口にはさむような形で使うものを指します。
そのままコンセントに差し込めば使える形状になっていて、値段も比較的安価です。
ヘアドライヤー・庭の散水ポンプ・庭園灯など、水回りで使う電気器具を使用する際に用いられるケースが多いです。
漏電遮断器付きコードリール
電源コンセントまで遠いときはコードリールを使用すると思います。
このコードリールに漏電遮断器が付いているタイプがあります。
通常のコードリールより高価ですが、安全の観点から使用した方が良いでしょう。
安全管理が厳しい作業所では漏電遮断器付きのコードリール必須です。
また、漏電の話から少し離れますが、使用される時はケーブルを巻いたまま使用せずに、ケーブルを全部外して使用しましょう。
私の働いている会社でコードリールのケーブルが熱くなって煙が発生したことがあります。
配線用遮断器と漏電遮断器の見分け方
ここまで、配線用遮断器と漏電遮断器の特徴や種類についてご紹介してきました。
しかし、現場に向かった際に形状から見分けるためには、見た目の特徴についても知っておかなければなりません。
そこで、配線用遮断器と漏電遮断器を簡単に見分けられる部分について、いくつかピックアップしてみました。
素人目にも分かるのが「漏電表示装置」
初歩的な部分になりますが、パッと見で配線用遮断器か漏電遮断器かが分かる部分が「漏電表示装置」になります。
同じメーカーのもので一見同じような構造に見えても、漏電遮断器であれば、何らかの形で漏電していることを報告する装置があらかじめ取り付けられています。
多くの場合、漏電遮断器のレバーは漏電時に中間位置まで下がり、漏電表示ボタンが飛び出す仕組みになっています。
そのため、レバーでの判別が一見して付きにくい場合でも、ボタン(黄色)が飛び出していれば漏電を疑えます。
テストボタン
漏電遮断器には「テストボタン」と呼ばれるもの(赤色・緑色・灰色)が備わっているものもあります。
押した際に漏電表示ボタンが飛び出し、スイッチが切れれば正常というものです。
町内会の回覧板や電気業者のパンフレットなどで、各家庭で「月に一度は点検するように」などと紹介されていることも多いようです。
構造上、テストボタンだけが外部から見えているものもありますから、注意が必要です。
感度電流表示
漏電表示やテストボタンを見れば、すぐに漏電遮断器と判断できますが、感度電流表示の有無によっても判断できます。
漏電遮断器での漏電か過負荷の判断
漏電遮断器は、「過電流遮断機能」と「漏電遮断機能」を備えているので、トリップした場合は漏電によってトリップしたのか、過電流でトリップしたのか、判断する必要があります。
トリップした漏電遮断器をすぐにオフにせず、どちらの要因でトリップしたのか確認しましょう。
漏電か過電流により、そのあとの対処方法が変わってきますので、大切なことです。
ポイント
・過負荷によるトリップ⇒レバー中間位置
・漏電によるトリップ⇒レバー中間位置と漏電表示ボタンとびだし
まとめ
以上、配線用遮断器と漏電遮断器の原理や違い・使い方についてご紹介してきました。
漏電遮断器を一言で説明した場合、配線用遮断器の高性能版と言えると思います。
それぞれの役割の違いを踏まえたうえでワンセットとして覚えておくと良いです。