こんな方におすすめ
- スターデルタ始動について知りたい方
- スターデルタ回路を知りたい方
ここ最近はインバータによる始動方法が多いですが、速度制御を必要としない、コストをかけたくない時にスターデルタ始動を使用するケースがあるかと思います。
そこで、今回はスターデルタ始動について「スターデルタ始動とは」「スター結線、デルタ結線とは」「回路例を用いて配線の構成と動作」を説明していきます。
動画で勉強したい方は当ブログのYoutube版をご覧ください。
目次
スターデルタ始動とは
電動機を運転するときの始動電流を低くするための始動方法の1つであり、主に5.5kW以上のモーターで使用されます。
電動機の結線をスター結線とデルタ結線を切り替えられる電動機を使用し、始動時にはスター結線で始動し、その後、素早くデルタ結線に切り替える始動方法です。
スター結線からデルタ結線への切り替えにはタイマーを使います。
始動電流は直接電源を電動機に接続する全電圧始動(直入れ)と比較すると、1/3になります。
また、今回はトルクについて触れませんが、始動トルクも1/3になります。
回路図は以下のようになります。
始動電流を小さくする理由
なぜ、始動電流を小さくするのか?
直接電源を接続すると、始動時は電動機の定格電流の5~7倍の電流が流れてしまいます。
その始動時の電流に耐えられるように、ブレーカーや配線の容量を大きなものにするのは非効率で経済的ではないからです。
ではもう少しスターデルタ始動について詳しく説明していきます。
スター結線とは
スター結線とは誘導電動機の3組の固定子巻線UX、VY、WZをそれぞれ120°ずつ違った方向に向け、巻線の端子XYZを一カ所につなぎ合わせて、他の端子UVWから3本の線を引き出す結線です。
その形が星に似ていることからスター結線、星形結線、Y結線とも呼ばれています。
スター結線の電圧と電流の関係
電動機の各巻線の端子間の電圧を相電圧といい、そこに流れる電流を相電流と言います。
また、線と線の間の電圧を線間電圧と言い、そこに流れる電流を線電流と言います。
相電圧と線間電圧の関係、相電流と線電流の関係は、Y結線かΔ結線かで変わってきます。
スター結線の場合は上図のような関係があります。
これは巻線に実際にかかる電圧は電源電源の1/√3に減圧されることを意味します。
Y結線には200Vがかかるが、各相の巻線には1/√3×200V=115Vの電圧がかかります。
デルタ結線
デルタ結線とは各巻線のつなぎめから3本の線を引出した結線です。
デルタ結線、三角結線とも呼ばれています。
デルタ結線の電圧と電流の関係
スター結線と同じように、電動機の各巻線の端子間の電圧を相電圧といい、そこに流れる電流を相電流と言います。
また、線と線の間の電圧を線間電圧と言い、そこに流れる電流を線電流と言います。
デルタ結線の場合は上図のような関係があります。
各相の巻線には全電圧200Vがかかり、定格出力(全トルク)が出ます。
配線の構成、動作について
上図は実際の制御盤の画像です。
大まかな動作は冒頭で申し上げましたが、ここではもう少し詳しく紹介していきます。
動作として、電動機の開閉は電磁接触器で行い、スター結線用の電磁接触器とデルタ結線用の電磁接触器を用意します。
電動機の固定子巻線から1相ごとに別々に6本UVWXYZを出します。
電動機の始動時にはスター結線用の電磁接触器の主接点が閉じて、固定子巻線をスター結線にします。
スター結線によって電動機の1相の巻線には電源電圧の1/√3しか電圧がかからないため、始動電流を小さくできます。
回転速度が規定の回転速度になる始動時間に合わせて、スター用の電磁接触器をOFFにしてデルタ用電磁接触器をONにします。
スター結線からデルタ結線に切り替える時はスター用とデルタ用の電磁接触器が同時にONするとショートしますので、切替にはタイマーを使用します。
また、必ずお互いの電磁接触器の補助接点をインターロック回路として使用します。
専用のタイマーを使用する理由
スター結線からデルタ結線に切り替えるタイマーは一般的なタイマーではなく、スターデルタ専用のタイマーになります。
例えば、オムロン製 H3CR-G8Eなどです。
一般的なタイマーとお違いとして、専用のタイマを使用するのは同時に切り替わらないようにどちらもONしない時間差をもうけているからです。
また、スター結線での運転時間と、スター結線からデルタ結線に切り替える時間とをタイマー1つで制御できるので使用されています。
実際の配線方法
では、回路図をみていきます。
色々な配線方法がありますが、上図は運転ボタンで運転、停止ボタンで停止するシンプルな回路です。
まずは遮断器をONにします。
運転ボタンを押すと、リレーRが励磁(ON)されます。
運転ボタンを離しても、自己保持回路のため、リレーRは励磁された状態(ON状態)を保持します。
リレーRが励磁されると、リレーRの接点がONし、タイマリレーTLRとMCが励磁されます。
MCが励磁されると、MCの接点がONし、スター結線用の電磁接触器MC-Yが励磁され、電動機がY結線で運転します。
その後、タイマリレーTLRが設定時間(カウントアップ)になると、TLRのb接点(スター接点)が動作し、電磁接触器MCがOFFになり、スター結線用の電磁接触器MC-YもOFFになります。
設定時間(切替時間)が経過したあとはタイマリレーTLRのa接点(デルタ接点)は閉じ、デルタ結線用の電磁接触器MC-Δが励磁され、デルタ結線に変わり、デルタ結線で運転します。
このとき、インターロック回路になっており、Δ結線のときはデルタ結線用のMC-ΔがONしているので、スター結線用の電磁接触器MC-YがONすることはありません。
まとめ:スターデルタ始動
最後にもう一度整理します。
まとめ
・スターデルタ始動は電動機の始動時の始動電流を抑える方法です。
・始動時に電動機の固定子巻線を電磁開閉器でスター結線し、その後デルタ結線に切替えます。
・始動時スター結線することにより、各相の巻き線は115Vの電圧になり、始動電流が1/3になります。そのとき、始動トルクも1/3なります。
・スター結線とデルタ結線の切替には専用のタイマーが使用されます。
今回はスターデルタ始動について説明致しましたが、他にも色々な始動方法がありますので、知識を深めたい方はこちらの記事に始動方法をまとめていますので、よかったら見てください。