電気の仕事に限らず、設備トラブルはつきものです。
トラブルを防止するための考え方として知っておくべきなのが、フェールセーフとフールプルーフです。
どちらも安全に関する重要な考え方ですが、横文字で名称が似ていて、区別して覚えるのが難しくないですか?
今回はフェールセーフとフールプルーフの考え方を説明します。
併せて、工場や家庭での例と両者の覚え方も説明しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
フェールセーフとは?
フェールセーフ(fail safe)とは、機器や装置は劣化し、いつかは壊れてしまうことを前提とし、不具合の発生や故障した場合に危険な状態にならないように設計する考え方です。
トラブルを防止する機能、例えば「電源が切れる」、「回転が止まる」などを機器や装置に備えておきます。
設備に関するフェールセーフの例
設備に関するフェールセーフの基本的な例を一部紹介します。
例1.再起動防止
停電した機械が復帰する時に、突然機械が動き出してしまい、機械に触れている作業者がいると事故につながります。
フェールセーフの考え方にもとづけば、作業者が再起動操作をしないと、機械が起動しない回路を設計することが大切です。
例2.ガード用インターロック
機械の運転中に作業者が誤って機械に触れてしまうケースも少なくありません。
ドアやゲートなどのガードを開いたときに機械が急停止する仕組みや、機械が停止しないロックが解除されない仕組みなどは、フェールセーフの考え方にもとづきます。
例3.配線の断線時に停止
設備やユニットが運転状態などの信号のやりとりにもフェールセーフの考え方があります。
相手側から信号が来ないときに動作しないようにするのはもちろんですが、信号線が断線した時にも装置が停止するように設計します。
身近なフェールセーフの例
身近なフェールセーフの基本的な例をご紹介します。
例1.電気ストーブの点灯
地震などの振動によって、電気ストーブが転倒した状態で動作し続けると、火災につながる恐れがあります。
そのため、転倒した場合は電源が切れる仕組みになっています。
例2.エレベータの扉
エレベーターで扉が閉まるときに、人が扉に挟まれそうになるとそのまま閉まらず、扉が開いて、人が挟まれるのを防止します。
フールプルーフとは?
フールプルーフとは、誰が扱っても安全で、ミスができないようにする仕組みであり、人為的なミスに対してあらかじめ対策を講じる考え方です。
ミスをしない人はいません。
人間は機械ではないので、肉体的な疲労や精神的な不調からも、人為的なミスを引き起こします。
フールプルーフは誰が扱ってもミスができないようにすることです。
ミスが起こってから危険な状態にならないようにどうするのか?ミスを起こさないようにどうするのか?の違いです。
設備に関するフールプルーフの例
人為的なミスを防ぐための設備に関するフールプルーフの基本的な例をご紹介します。
例1.ガード
開口部から加工物や工具などは入れられるけれど、手が届かないようにするために固定ガードを設置する例があります。
運転しているモーターのベルトに手が触れると、大けがにつながります。
私の経験をふまえても、基本的にベルトの周囲がカバーで覆われている光景は、珍しくありません。
例2.オーバーラン機構確認
スイッチをオフにしたあとに惰性運動や残留電荷の危険が残るケースもありえます。
このような危険がある間はしばらくガードが開くことができない設備もあります。
ガードが開かれない仕組みも、フールプルーフの考え方にもとづきます。
例3.両手操作
プレス機などの手を挟むと大きなケガに繋がる装置では、両手で同時に操作しないと機械が動作しません。
手を離すと停止するように設計されています。
例4.配線コネクタ
配線同士を接続するときにコネクタを使用することがありますが、コネクタにはオスとメスがあり、向きが合っていないと接続できないようになっています。
身近なフールプルーフの例2
身近なフールプルーフの基本的な例をご紹介します。
例1.洗濯機
ほとんどの洗濯機は、安全性を考慮して、運転中の場合や運転終了後も完全に停止していないとドアが開けられないようになっています。
例2.乾電池で動く玩具
乾電池を入れるボックスですが、プラスとマイナスの向きがあっていない電池が入らないようになっています。
フェールセーフとフールプルーフの覚え方
フェールセーフとフールプルーフは名称が似ていて、区別して覚えるのが難しいと感じた方もいるのではないでしょうか。
そこでおすすめしたいのが、フェールセーフとフールプルーフの英語の意味を知っておくことです。
フェールセーフは英語でfail safeとあらわされます。
failは「失敗、しくじる」や「機能しなくなる、故障する」、safeは「安全な」といった意味があります。
ですので、" 故障したら安全に "ということで fail → safeと覚えれば分かりやすいです。
一方のフールプルーフは英語でfool proofとあらわされます。
foolは「愚か者」、proofは「防ぐ」といった意味があります。
" 人為的(愚かな)ミスを防ぐ" と覚えることで、フェールセーフと区別することが可能です。
参考:フォールトトレラントとフェールソフト
少し話がそれますが、フェールセーフやフールプルーフの同じような安全に関する単語がありますので少し紹介します。
フェールソフト
フェールソフト(fail soft)とはトラブル発生時に故障個所の機能を切り離し、機能や性能が低下しても運転の継続を優先する考え方です。
例として、停電したらバッテリー運転に切り替わるUPSが設置されたサーバーやパソコンなどがあります。
フォールトトレランス
フォールトトレランス(Fault tolerance)とはトラブル発生時に障害が発生しても、機能や性能を制限することなく、運転の継続を優先する考え方です。
英語の「tolerance」は名詞であり、耐久・耐久力を意味します。
また、先ほど説明したフェールセーフやフェイルソフトは、フォールトトレランスに含まれますが、上考え方によっては同列で扱われていることもあります。
上図は含めた図です。
フォールトレラント
フォールトトレラント(Fault tolerance)はフォールトトレランスと同じ意味です。
英語の「tolerant」は形容詞で耐性のあるという意味です。
まとめ:どちらも重要な考え方
最近の設備は自動化のものが多く、便利な反面、異常や予期しない誤操作によって大きな事故になります。
そんな事故を未然に防ぐために、つねに安全側に移行させるのが「フェールセーフ」と「フールプルーフ」です。
最後にもう一度まとめて終わりにします。
フェールセーフ
・fail safe
・「ミスや故障は必ず起こるもの」という考え方で、ミスや故障時に危険な状態にならないように設計
フールプルーフ
・fool proof
・「ミスや故障が起こらないようにしよう」という考え方で、誰が扱っても安全に動くように設計
フェールセーフとフールプルーフはいずれも、設備の設計や機器の操作に関するトラブルを回避するために重要です。
仕事の基本として、最低限の考え方として知っておくのが良いです。