三相誘導電動機(三相モーター)には色々な始動方法があり、全電圧始動、スターデルタ始動、リアクトル始動、インバータ始動、始動補償器始動、一次抵抗始動などあります。
本記事ではこの中の「全電圧始動」「スターデルタ始動」「リアクトル始動」「インバータ始動」の4つを紹介していきます。
今回の記事は動画でも説明しています。
動画の方が好みの方はそちらをご覧ください。
色々な始動方法がある理由について
電源をモーターに直接接続すればいいのでは?と思った方いませんか?
なぜ、色々な始動方法があるか最初に説明します。
シンプルに接続したいのですが、そういうわけにはいきません。
理由は大きく分けて2つあります。
始動電流
理由として、モーターは始動する時に、定格電流の5~7倍ほど多くの電流が流れてしまいます。
小さな容量のモーターでしたら、問題ありませんが、その始動時の電流に耐えられるように、ブレーカーや配線の容量を大きなものにするのは非効率です。
始動時という短い時間だけの為に、容量の大きなブレーカーや配線を選定するのはコストがかかり、経済的ではありません。
始動トルク
始動トルクも関係あります。
始動トルクは約1.5~2倍程度発生します。
このため始動時に相手の機械に大きな衝撃を与えることがあります。
また、設備の電源容量が小さい場合は、始動電流のため電圧低下が発生することにより、電圧変動があり、同一電源につながれている他の負荷に支障を与えることもあります。
そこで対策として、スターデルタ始動方式などの電圧を下げて始動する以下の方法が有効となってきます。
全電圧始動について
こちらは先ほど説明した、単純に電源を直接モーターに接続する始動方法です。
全電圧始動は直入れ始動、ラインスタートとも呼ばれ、電磁接触器または電磁開閉器を通して直接電源を三相モーターに接続する方法です。
回路図は上図になり、モーターへの配線は3本になります。
配線はシンプルになりますが、電源の電圧が直接モーターに印加されるため、始動時にモーターの定格電流の5~7倍の始動電流が流れてしまいます。
始動電流が大きくなるため、モーターの容量が7.5kw以下、小容量のモーターに使用されます。
スターデルタ始動(Y-△始動)
モーターの結線をスター結線とデルタ結線を切り替えられるモーターを使用し、始動時にはスター結線で始動し、その後、素早くデルタ結線に切り替える始動方法です。
スター結線からデルタ結線への切り替えにはタイマーを使います。
始動電流は全電圧始動(直入れ)と比較すると、1/3になることから、5.5kW以上のモーターで使用されます。
また、始動トルクも1/3になるため、軽負荷での起動に適していますが、一般的なポンプやファンでの使用では問題ありません。
回路図は上図のようになります。
一般的に使用されるモーターと異なり、配線は6本になり、電磁接触器で結線を切り替えます。
回路は電磁接触器を2つ又は3つ使用することになりますので、制御盤は大きくなります。
リアクトル始動
モーターと電源の間にリアクトル(コイル)を挿入し、このリアクトルのインピーダンス(抵抗)により始動電流を抑える方式です。
モーターの1次側にリアクトルを入れることで電圧降下させ、始動電流と始動トルクを下げます。
電動機の回転速度が定格速度近くまで達した時点でリアクトルを短絡させて始動状態を維持させます。
特徴として、リアクトルを設置するため、制御盤が大きくなります。
インバータ始動
電圧・周波数を、調整できるインバータを使用して、低い周波数から始動して設定された周波数で運転する方式です。
低い電圧、周波数からモーターを始動することで、始動電流を抑えることができます。
工場ではコンベアの速度制御するために小容量のモーターに設置されたり、省エネルギーの観点からモーター制御に使用されるなど、幅広く用いられています。
デメリットとしてノイズの発生源になることがありますので注意です。
インバータに関しては配線方法やパラメータ設定方法などいつくか記事がありますので、インバータに関してもっと知りたい方はこちらからご覧ください。
動画では実際の配線作業を4つ紹介しています。
インバータに関する動画
まとめ:始動方法
今回の動画では三相モーターの主な始動方法を4つ紹介いたしました。
始動方法
・全電圧始動(直入れ)
・スターデルタ始動
・リアクトル始動
・インバータ始動
工場などの現場の規模にもよりますが、私が今まで作業していた中で実際に自分が配線したり、見たことがあるのは「全電圧始動」「スターデルタ始動」「インバータ始動」です。
もちろん、業界や会社の規模によって異なると思いますが、ここ最近はインバータ始動が多いかなと感じています。
他にも今回は紹介しなかった「始動補償器始動」、「一次抵抗始動」などありますが、まずは今回の始動方法を覚えておけば良いと思います。