設備管理の現場では施設ごとに環境が異なり、防塵や防水の観点から設備の仕様を決定する必要があります。
防塵や防水に関する指標として挙げられるのがIP規格です。
すでに「IP〇〇」などという表記を見たことがある方もいらっしゃるかと思います。
今回はIP規格の概要をはじめ使用される数字の意味や身近な事例を解説していきます。
私自身、IP〇〇の〇〇の数字が大きくなると、性能が良いというのは覚えているのですが、細かい内容は数日経つと忘れてしまってます。
目次
防塵・防水仕様に関するIPとは?
一般的に、機器の保護構造に関する防塵・防水性は等級に分類され、テスト方法が定められています。
日本では国際標準規格であるIEC529に準拠して日本産業規格(JIS)および社団法人日本電機工業会(JEMA)がIP表で規格化しています。
IPとは英語でInternational Protectionという表記であり、日本語に訳すと侵入に対する保護です。
その点をふまえてIP規格は厳密に、「危険箇所へ接近することに対する人体の保護」や「外部からの固形物体に対する電気機器の保護」の程度や、「水の侵入による有害な影響に対する電気機器の保護」の程度を示した規格として定められています。
IPの表記ルール
IPの後ろには数字が記載されるルールであり、IPコードと呼ばれています。
具体的には第一特性数字と第二特性数字が連番で記載されます。
第一特性数字が「危険箇所へ接近することに対する人体の保護」や「外来固形物体に対する電気機器の保護」の程度を示し、第二特性数字が「水の侵入に対する電気機器の保護」の程度を示しています。
数字の組み合わせを確認すれば保護の程度がわかる仕組みです。
今回は「外来固形物体に対する電気機器の保護」と「水の侵入に対する電気機器の保護」について説明していきます。
たとえば、IP68は「完全な防塵構造」という条件をあらわす6と「水面下で使用できる」という条件をあらわす8の数字が組み合わせられています。
ですのでIP68は完全な防塵構造であり、水面下での使用が可能だとわかります。
IP表で示される具体的な等級
第一特性文字と第二特性文字が示す内容は具体的に以下になります。
オプションの付加文字と補助文字は割愛し、第一特性文字は「外来固形物体に対する電気機器の保護」、第二特性数字は「水の侵入に対する電気機器の保護」で説明していきます。
第一特性文字
【外来固形物体に対する保護】
第一特性数字 | 保護の程度 | |
0 | 無保護 | - |
1 | 直径50mm以上の外来固形物に対して保護 | 直径50mmの球状の固形物の全体が浸入してはならない。 |
2 | 直径12.5mm以上の外来固形物に対して保護 | 直径12.5mmの球状の固形物の全体が浸入してはならない。 |
3 | 直径2.5mm以上の外来固形物に対して保護 | 直径2.5mmの固形物が全く浸入してはならない。 |
4 | 直径1.0mm以上の外来固形物に対して保護 | 直径1.0mmの固形物が全く浸入してはならない。 |
5 | 防塵形 | 塵埃の侵入を完全に防止することはできないが、電気機器の所定の動作及び安全性を阻害する量の塵埃の侵入があってはならない。 |
6 | 粉塵形 | 塵埃の侵入があってはならない。 |
第二特性数字
【水の侵入に対する保護】
第二特性文字 | 保護の程度 | |
0 | 無保護 | - |
1 | 鉛直に落下する水滴に対して保護 | 鉛直に落下する水滴によっても有害な影響を及ぼしてはならない。 |
2 | 15度以内で傾斜しても鉛直に落下する水滴に対して保護 | 鉛直に対して左右15°以内で傾斜したとき、鉛直に落下する水滴によっても有害な影響を及ぼしてはならない。 |
3 | 散水に対して保護 | 鉛直から左右60°までの角度で噴霧した水によって、有害な影響を及ぼしてはならない。 |
4 | 水の飛まつに対して保護 | あらゆる方向からの水の飛沫によっても有害な影響を及ぼしてはならない。 |
5 | 噴流に対して保護 | あらゆる方向からのノズルによる噴流水によっても有害な影響を及ぼしてはならない。 |
6 | 暴噴流に対して保護 | あらゆる方向からのノズルによる強力なジェット噴流水によっても有害な影響を及ぼしてはならない。 |
7 | 水に浸水しても影響がないように保護 | 規程の圧力や時間で水中に沈めた時、有害な影響を生じる量の水の侵入があってはならない。 |
8 | 潜水状態での使用に対して保護 | 上の数字7より厳しい条件下で継続的に沈めた時、有害な影響を及ぼしてはならない。 |
設備でのIP仕様の事例
押しボタンスイッチやランプ、コネクタ、制御盤などを工場の屋内で使用するときは、一般的にIP40仕様が利用されます。
屋外で水がかかったり粉塵が発生したり箇所では、IP56仕様などが利用されます。
具体的な市販製品の例でも確認してみましょう。
木工機械や食品機械などの動力用開閉器(押しボタン)として、IP67仕様が採用されている事例が見受けられました。
また、IP65仕様のLEDパイロットライトなども流通しています。
間違った規格を選定しないように気を付けましょう。
まとめ:IP規格を理解して防塵や防水の耐性を知ろう
IP規格の概要をはじめ数字の意味や身近な事例を解説しました。
IP規格は数字が高いほど、防塵防水性能が良いということは知っていても、具体的な保護の程度まで覚えているかは少ないのではないでしょうか。
IP規格は今回紹介した事例以外にもよく見かけることがあります。
たとえば、iPhoneがよい例です。
この記事を書いている時のiPhoneの最新機種はiPhone 13であり、IP68仕様です。
これは最大水深6メートルで最大30分間の耐性があるとのことです。
IP規格を理解して防塵や防水の耐性を知れば、日常生活でも適切な商品が選べるようになるでしょう。
参考文献・サイト
日本産業規格 JIS C 0920 : 2003 (日本産業標準調査会から閲覧)