電気に関する仕事に就くと「電気工作物」という言葉を耳にします。
電気設備であることはわかるけれど、具体的な種類についていまいちしっくりこない方もいるのではないでしょうか。
私自身も何度か調べたことがありますが、似たような単語が多くて分かりにくいです。
そこで今回は、電気工作物の概要をはじめ、自家用と事業用、一般用の違いについて説明していきます。
目次
電気工作物とは何か?
そもそも電気工作物とは、どのような意味を持っているのでしょうか?
電気工作物は電気事業法の第2条にて規定されており、規定では
発電、変電、送電若しくは配電又は電気の使用のために設置する機械、器具、ダム、水路、貯水池、電線路その他の工作物(船舶、車両又は航空機に設置されるものその他の政令で定めるものを除く。)
電気事業法 第2条(定義)
とされています。
簡単に言うと、電気を供給するのに必要な設備の総称です。
上の図でも紹介しましたが、具体的な設備は下記の通りです。
電気工作物
・発電所
・変電所
・送配電線路
・受電設備
・屋内配線
・電気を使用するために設置する設備
など
事業用電気工作物と自家用電気工作物、一般用電気工作物の違い
電気工作物は「一般用電気工作物」と「事業用電気工作物」の2つに分類され、さらに「事業用電気工作物」は「自家用電気工作物」と「電気事業の用に供する電気工作物」に分けられます。
一般用電気工作物とは
一般用電気工作物とは、電気事業者から低圧600V以下の電圧で受電している場所の電気工作物です。
具体的には一般住宅や小規模な店舗、事業所などの電気工作物をさします。
一般家庭用の太陽光発電なども一般用電気工作物としてあつかわれます。
一般用電気工作物というと専門的に聞こえますが、実際には一般家庭で設置されている分電盤や屋内配線であり、身近な存在です。
所有者や占有者に保安責任がありますが、電気保安に関する専門知識が乏しい方が所有していることもあり、事業用電気工作物とは異なる保安体制が敷かれています。
具体的には電力会社などの電気供給者に対して、一般用電気工作物に関する技術基準の適合性を調査して、問題があれば所有者に通知することが義務付けられています。
実際には電力会社などから委託された業者が4年に1回調査業務を行っています。
調査業務の内容
・電力計や電線の引き込み口に異常がないか
・漏れ電流の測定
・分電盤の点検(調査業務時に家にいる場合)
事業用電気工作物とは
電気事業の用に供する電気工作物および自家用電気工作物の総称です。
一般用電気工作物以外の電気工作物として定義されています。
電気事業の用に供する電気工作物
電気事業の用に供する電気工作物は、電気事業者の発電所や変電所、送配電線路など、日本各地の電力会社が運用している電気供給設備のことです。
ただし、電気事業者が所有している研究所や病院、社宅などは電気事業の用に供する電気工作物ではありません。
また、「電気事業の用に供する電気工作物」は「電気事業用電気工作物」とも呼ばれることがあります。
自家用電気工作物
自家用電気工作物は、一般用および電気事業の用に供する電気工作物以外の電気工作物をさします。
電気事業者から高圧または特別高圧を受電する事業所(工場やビルなど)の電気工作物といえば分かりやすいです。
具体的には工場やビルなどの変電設備、分電盤、屋内外配線等です。
一般電気工作物よりも大規模で電圧が高くなることから、電気設備の危険性が高い点に特徴が見受けられます。
また、電力会社から低圧受電している場合であっても、発電設備を所有している場合は自家用電気工作物とみなされる場合があります。
たとえば、病院では停電が起きたときのために非常用ディーゼル発電機を設置していることがあります。
仮に出力が10kW以上の発電機だった場合、自家用電気工作物としてあつかわれるので注意する必要があります。
電気主任技術者と事業用電気工作物の関係
電気工作物の定義と切り離せないのが、電気主任技術者の存在です。
電気事業法の第43条では、事業用電気工作物を設置する者に対して、事業用電気工作物の工事・維持・運用に関して免状の交付を受けた電気主任技術者の選任を義務付けています。
もし免状を持っている人がおらず、選任することが難しい場合は保安協会などの外部へ委託をお願いする必要があります。
選任に関しては条件はありますが、自家用電気工作物には経済産業大臣の許可があれば、免状の交付を受けていない者を主任技術者として選任することも可能だとしています。
具体的には最大電力500kW未満の需要設備の自家用工作物を有する事業所であれば、第1種電気工事士に合格した人などが産業保安監督部長の許可を受ければ「許可主任技術者」になることができます。
保安協会の方はもちろん常駐ではないので、実際の日々の業務は電気主任技術者資格を有する先輩が代務者として指揮をとっており、保安協会の方と連絡を取っています。
まとめ:似ている単語で分かりにくいけど大切
事業用電気工作物や自家用電気工作物の定義は、電気に関する法律を理解するためにも必要な知識です。
似ている用語で分かりにくいですが、明確に区別していないと、知らぬ間に法律違反につながってしまうこともありえます。
これから電気に関する仕事に就く方をはじめ、すでに事業所の運営を行っている責任者の方は、あらためて電気工作物に関する定義をおさらいしてみてはいかがでしょうか。
私も忘れないように時々確認しています。
参考文献およびサイト
電気事業法第43条(電子政府の総合窓口e-Gov)